[ラブ・アクチュアリー] Love actually
2004年2月7日より、日劇1他全国一斉ロードショー

脚本・監督:リチャード・カーティス/製作:ダンカン・ケンワーシー、ティム・ビーヴァン、エリック・フェルナー/出演:ヒュー・グラント、リーアム・ニーソン、コリン・ファース、ローラ・リニー、エマ・トンプソン、アラン・リックマン、キーラ・ナイトレイ、マルティン・マカッチョン他
(2003年/イギリス/2時間15分/配給:UIP)

→ヒュー・グラント来日記者会見

∵公式サイト

【STORY】
ロンドンの下町はクリスマスを間近に控えた人々で心なしか浮き足立っている。秘書に恋心を抱き始める独身の首相、学校一の人気者に片思いする男の子、弟に恋人を寝取られ心の傷を癒すために南仏へ出かける作家、入社以来2年7ヶ月のあいだ同僚に思いを寄せ続けるデザイナー、部下にモーションをかけられ心を奪われる妻子持ちの社長、親友と結婚した新妻に言えない想いを隠し続ける芸術家、アメリカにナンパをしに行く青年など、それぞれがそれぞれの想いを胸に、クリスマスを迎え、愛のカタチを再確認していく。

【REVIEW】
イギリスのラブ・コメディと言えば、製作会社のワーキング・タイトルがすっかりブランド化してしまった。『フォー・ウェディング』『ノッティングヒルの恋人』『ブリジット・ジョーンズの日記』といった日本でも名の知れた作品を手がけたことでも有名だが、実は『ビーン』や『エリザベス』なども製作し、低予算映画の製作を目的に設立されたWTからは『リトル・ダンサー』なども送り出されている。ワーキング・タイトル印の作品ならば、はずれることはないだろうという安心感を伴いつつ、『ラブ・アクチュアリー』は同じテイストを踏まえつつも、いくつものストーリーが織りなす群像劇として描かれた。

本作の見所の一つに英国を代表する俳優たちが数多く登場していることだが挙げられる。ワーキング・タイトル作品でお馴染みのヒュー・グラントを筆頭に、リーアム・ニーソン、エマ・トンプソン、アラン・リックマン、コリン・ファース、キーラ・ナイトレイ、ローラ・リニー、ローワン・アトキンソン、ビル・ナイ、アンドリュー・リンカーン、マルティン・マカッチョン、ジョアンナ・ペイジグレゴール・フィッシャー、キウェテル・イジョフォーなど、日本での知名度はばらばらだが、英国ではみな顔のしれた俳優達だ。またビリー・ボブ・ソーントンやロドリゴ・サントロといったアメリカをはじめとする国外の俳優の絶妙なキャスティングも見逃せない。名だたる俳優をキャスティング出来たのは英国だけではなく米国でも顔の利く製作のティム・ヴァンとエリック・フェルナーの功績が大きい。

そんな彼等が繰り広げるストーリーは9つのエピソードが同時に進行し、主要な登場人物も20人をゆうに越している。またところどころにちょっとしたお遊びが設けられていたりと、とても具沢山な作りになっている。群像劇と言えばロバート・アルトマンを筆頭に、最近ではポール・トーマス・アンダーソンやスティーブン・ソダーバーグ、ガイ・リッチーといった監督の名前が浮かぶけれど、本作を手がけたのは『ラブ・アクチュアリー』が初監督作品となるリチャード・カーティス。この名前を聞いてピンと来た人はけっこうワーキング・タイトル通かも。実は最初に挙げた3大作品の脚本家でもあり、本作でも脚本を兼任している。初監督にしてこれだけの内容をまとめ上げたカーティス監督の手腕は誰もが認めるところだろう。しかも、この監督はシナリオやコンテ通りのシーンを撮影すると、余力のある限りカメラの位置を変えたり、役者の演技を少々変えてシーンのバリエーションを撮り溜めておくという。そして編集の際に場面ごとの選択肢を多く用意しておき、常にベストのカットをチョイスしていくというのだ。本作は英国作品の中では比較的製作費の高い作品だから多くのフィルムを使えたということもあるだろうけれど、今まで監督の脇で現場を眺めてきた経験と、脚本をいじることのできる立場があったからこそ出来る慎重な作り方なのかもしれない。

「世界がどれほど暗くなろうとも、人生のほとんどの出来事は愛に関係している」とカーティス監督は語っている。作品の最初と最後に空港の到着ロビーの情景が映し出されるが、出迎える人や到着した人々の笑顔や愛情がたっぷり映し出される光景を見ると、作品の中で描かれる様な具体的な愛のカタチだけではなく、日常の中にも愛が沢山あって、自分も愛に関わる一人だということを思い起こされる。9つのエピソードはどれも感情移入しやすく決して突飛な内容ではない。モーニング娘。のメンバーの誰か一人でも好きであればモーニング娘。というグループが好きになってしまうように(人によるが)、『ラブ・アクチュアリー』の一つのエピソードだけでも気に入れば、『ラブ・アクチュアリー』という作品の世界が好きになるだろうし、彼等がラストに織りなすハッピーなアンサンブルがとても心地よく感じることは間違いない。「愛」とあらためて書くとなんともこっ恥ずかしいし、「愛してる」なんて台詞はなかなか言えないけれど(これも人によるが)、この作品で身近にある「愛」の存在をあらためて心で感じてみてはいかが?

ちなみにイギリスで男性がもっともロマンティックになるのは、本作が日本で公開される日でもあるバレンタインデーとクリスマスなのだとか。イギリスのバレンタインは女性ではなく男性が女性に対して愛を表現する日らしいけど、それはともかく、まあ、恋まっさかりの時期である2月に本作を観るのもオツなものだけど、欲を言えば12月に公開してもらって“いとしいしと”と一緒にクリスマス気分を味わいたかったかな。

Text:うたまる(キノキノ



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