Once Upon a Time in Mexico
STORY:
とあるメキシコの酒場。CIA捜査官のサンズ(ジョニー・デップ)に、アイパッチの情報屋ベリーニ(チーチ・マリン)が伝説の男エル・マリアッチ、通称エルについて語っている。「一人で町を二つ消した……バリヨの組織を壊滅させ……。そしてマルケス将軍、強くて危険な男だ、奴は本気であのマリアッチを憎んでた」と、因縁の酒場の決闘が再現される。銃弾が飛び交い、ついに弾切れで対峙するマルケスとエル。そこに恐ろしくゴージャスな女が現われる。マルケスの女だったカロリーナ(サルマ・ハエック)がエル・マリアッチについたのだ。だが、撃たれたマルケスは死ななかった……「後は知らん。とにかく男は伝説になった」と締めくくり、そのエル・マリアッチ(アントニオ・バンデラス)の居場所を教える、子供用の弁当箱に入った札束を報酬に貰って……。

ギター職人達の町に“彼”はいた。サンズに雇われたククイ(ダニー・トレホ)達が町を襲い、職人達を殺すと脅して彼を連行する。同じ頃、麻薬王バリヨ(ウィレム・デフォー)はTVで大統領の演説を観ていた。と、バリヨと似た顔の男を、側近のビリー・チェンバース(ミッキー・ローク)が招き入れる、チワワを抱いて「俺がお前ならすぐ引き返すぜ」と忠告しながら……。一方、サンズの前に立ったエルが依頼されたのは、バリヨのクーデター計画の阻止だった。いや、その実行部隊のマルケス将軍()が大統領を殺した時点で、将軍を殺すことを依頼したのだ。「店のエルコ・ピビル(豚の蒸し焼き)が美味過ぎるとコックを撃つ――この国のバランスを保つために」とサンズは説明し、不味いという顔で立ち去ったエルを見て、やはり調理場へ行ってコックを撃ち殺す。クレイジーなCIA捜査官だ。メキシコ警察も動き始めていた。押収したはずの密輸銃が消えたのだ。大統領の反バリヨ政策は警察内部でも厄介な事態を呼びそうだった。女性刑事アへドレス(エヴァ・メンデス)は、捜査チームに志願しても取り合わない署長に腹をたてる。

教会で、再び手を血で染めることを懺悔したエル・マリアッチは、そこでサンズがテストと称する銃撃戦をくぐり抜け、かつてのギタリスト仲間の元へ。マリアッチとはもともと楽団(結婚式場の楽団が由来)という意味だ。場末のストリップ劇場にいたハンサム君ロレンソ(エンリケ・イグレシアス)とアル中のフィデオ(マルコ・レオナルディ)と再会し、準備を始める。一方でサンズは、6年前に相棒をバリヨの手下のゲバラ医師に拷問死させられた元FBI捜査員ラミレス(ルーベン・ブラデス)と接触する。復讐の機会を示唆されたラミレスは捜査員証を偽造し現役FBIの振りをして、全米指名手配犯でもあるビリー・チェンバースを捕らえる。ビリーもバリヨの汚い仕事に嫌気がさしていたため、捜査協力に応じるのだった。こうして各勢力のバランスが整いつつあった。が、実はサンズ捜査官には別の計画があった――闘牛場で密かに大統領の側近と密談し、アへドレス刑事とも通じていたサンズは、莫大な金を着服する手筈を整え、さらに一国の運命を自らで全てコントロールする快感に酔い痴れていたのだ。だが誤算があった。ククイはバリヨ側に鞍替えしてエル・マリアッチを捕縛、替え玉を用意して整形手術するバリヨの情報を入手したラミレスは罠に嵌まり、クーデター決行直前にサンズ自身も両目を潰されてしまう。やがてマルケス将軍の元から脱出したエル・マリアッチの、マルケスとの真の因縁が明かされるが、エルはその「復讐」を超え、「メキシコの息子」として闘いに挑む決心をしていた……。

そして運命の11月2日、盛大な「死者の日」の祭がクーデターで血に染まる時、幾重にも交錯した陰謀が絡み合って、壮絶なクライマックスが訪れる!

Once Upon a Time in Mexico
REVIEW:
どひゃー。何が凄いって、やっぱりジョニー・デップ(『シザーハンズ』『スリーピー・ホロウ』『ショコラ』『耳に残るは君の歌声』『パイレーツ・オブ・カリビアン』など)の怪演である。主演はどう考えてもアントニオ・バンデラス(『デスぺラード』『ポワゾン』『フリーダ』『スパイキッズ』シリーズなど)なのに、変に群像劇的な展開なのはいいとして(いや何がどうなってるのか軽く混乱する作りなのはよくないけどさ)、掻き回し役のジョニー・デップがなんとアカデミー主演男優賞にノミネートされるに至っては、オスカー審査員の方々も洒落ッ気が過ぎるというか、「はは〜ん、そういう態度で観ていいのね」って感じ。とにかく銃撃戦もアクションも派手でやたら簡単に人が死にまくるんだけど、そんなことよりジョニー・デップ演じる悪徳CIA捜査官サンズのやることなすことに、目が釘づけになることは必至。笑いまくってしまいました(←いいのか? いいのだ)。

ロバート・ロドリゲス監督の、たった7千ドルで撮られた伝説的メジャーデビュー作『エル・マリアッチ』およびその数千倍のバジェットでリメイクされた『デスペラード』に続く、さらなるビッグな予算(ほとんど銃撃戦代に消えたとか)と豪華なキャストによる三部作(?)最終章のアクション超大作である。主演のバンデラス以下、おなじみのロドリゲス組も総登場、サルマ・ハエック姉御(『デスぺラード』『54』『パラサイト』『ドグマ』『スパイキッズ』『フリーダ』など)も回想シーン=『デスペラード』と本作の間にあったエピソードでしっかり活躍し(最近ウエスト・フェチなので姉御のウエスト・ラインの美しさにゾクゾクしたぜ)、チーチ・マリンやダニー・トレホもいい感じ。また主役を食う活躍のジョニー・デップ以外にも、ウィレム・デフォー(『プラトーン』『ワイルド・アット・ハート』『シャドウ・オブ・バンパイア』『ぼくの神さま』『スパイダーマン』など)、お懐かしやのミッキー・ローク(『ナインハーフ』『エンゼル・ハート』『レイン・メーカー』『バッファロー'66』『プレッジ』『SPUN』など)といったクセ者俳優もイイ味出てたし。ロドリゲス監督の次回作は、アメコミの映画化『SIN CITY』らしいが、それより監督することが決定したらしい『火星のプリンセス』(有名な古典SFシリーズ第一作だ)はぜひ観たい! それまでは死ねんかも……。

ところで。最近のロドリゲス監督の大ヒット作『スパイキッズ』シリーズと違って「CGなんて使わんぜ」ってな実写アクション銃撃シーンの連続にも関わらず、なんだかリアル感よりも、妙な懐かしいほのぼのとした楽しさがあったのは何故だろう? 『キル・ビル』のタラちゃんと義兄弟の契りを交わした過激バイオレンス派監督のはずなのに……観る方が慣れちゃったのかなぁ。まあもともとあった「バカ西部劇メヒコ風味」としては充分楽しめるものにはなっているけれど。そうそう、某サイトで本作が「ジャンル:西部劇」となってたのに笑ったんだけど、マジな話、一体いつの時代の話なんだろね? メキシコは2000年に71年ぶりに野党から大統領が出たんだけど、それまでの制度的革命党(PRI)一党支配の政府に、エル・マリアッチが「いい人だ」って認めるほどの名大統領がいたんだろうか? ううむ。原題は「Once Upon a Time in Mexico(昔々メキシコで)」だしなぁ……。もしかして現大統領ビセンテ・フォックス・ケサーダ(就任期間2000年12月〜2006年11月)が、麻薬組織や軍閥をきちっと排除することを期待して、遠い未来から現代を語っているって設定なのかもしれない(銃火器は現代のものを使用してるようだしね)。クーデター軍に市民が反抗するシーンがしっかり描かれていたりするのも、ちょっと興味深かったのだった。

Text:Hidemaro Kajiura

Copyright © 2004 UNZIP.
『レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード』
2004年3月6日より丸の内ルーブル他全国東急・松竹系にて公開!
(2003年/アメリカ/1時間41分/配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/宣伝:マンハッタンピープル)


CAST&CREW:
監督・脚本・製作・撮影・美術・編集・視覚効果スーパーヴァイザー・作曲他:ロバート・ロドリゲス/出演:アントニオ・バンデラス、ジョニー・デップ、サルマ・ハエック、ウィレム・デフォー、ミッキー・ローク、エヴァ・メンデス、ダニー・トレホ、エンリケ・イグレシアス、マルコ・レオナルディ、ルーベン・ブラデスほか

REVIEWER:
Hidemaro Kajiura

EXTERNAL LINK:
『レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード』公式サイト

DVD:
cover デスペラード...DESPRADO
主演:アントニオ・バンデラス/監督:ロバート・ロドリゲス