GIRL WITH A PEARL EARRING
天才画家フェルメールと、名画「真珠の耳飾りの少女(通称:青いターバンの少女)」のモデルとなった少女の物語。

REVIEW:
アカデミックな作品はあまり好きではない。それなので『ゴーストワールド』で日本でも注目され、コーエン兄弟の『バーバー』では観客の度胆を抜き、『ロスト・イン・トランスレーション』に主演してまさに今を時めく人となったスカーレット・ジョハンソン(←こう表記するのが正しいと聞いたので、それに倣って。)が、同時期に公開される一見地味そうなこの作品にも主演していることも、最初は「ふ〜ん」と思っていた程度だった。17世紀のオランダ。画家のフェルメールとそのモデルになった少女の物語…と聞いても、絵画にそれほど感心のない人間にとっては、興味が湧かないのも仕方がない。

ところが映画が始まると、まず画面の美しさに夢中になった。光と影。その色彩。圧倒的な魅力を持ったビジュアルというのは、時にその物語やなんかをどうでもよくしてしまうものである。撮影監督としてクレジットされているエドゥアルド・セラという人は、『髪結いの亭主』をはじめ、パトリス・ルコントの作品で知られる名撮影監督なのだとか。さらに美しい音楽。そして作品全体を覆う異様な緊張感。この緊張感は、フェルメールとジョハンソン演じる少女グリートのプラトニックな恋愛感情そのものでもあると思うのだけど、大袈裟に盛り上げ過ぎることもなく、これだけ微妙な緊張感を作品の最初から最後まで同じトーンで保ち続ける映画というのも珍しい。そんな訳で。結局、最後までスクリーンに釘付けになっていた。

そしてもう1点。改めて思うのは、スカーレット・ジョハンソンという女優の魅力である。幸福そうにも苦し気にも見える、印象的な表情。“『ゴーストワールド』の可愛いほう”なんて言われたりもしていたけれど、ただ可愛いだけの女優じゃなかったことは、ここでもちゃんと証明されている。

Text:nakamura [UNZIP]

Copyright © 2004 UNZIP.
『真珠の耳飾りの少女』
2004年4月10日よりシネスイッチ銀座他全国順次公開
(2002年/イギリス/100分/配給:ギャガ・コミュニケーションズGシネマグループ)


CAST&CREW:
監督:ピーター・ウェーバー
脚本:オリビア・ヘドリード
撮影監督:エドゥアルド・セラ
原作:「真珠の耳飾りの少女」白水社
出演:スカーレット・ジョハンソン、コリン・ファース、キリアン・マーフィー、トム・ウィルキンソン他


REVIEWER:
nakamura [UNZIP]

EXTERNAL LINK:
『真珠の耳飾りの少女』公式サイト

BOOK:
cover 「真珠の耳飾りの少女」白水Uブックス
トレイシー シュヴァリエ 著/白水社