L'HOMME DU TRAIN
パトリス・ルコントが次に描くのは、男のロマンに伴奏された誰もが持っている“運命に逆らいたい”シンドローム。

REVIEW:
『仕立屋の恋』しかり『髪結いの亭主』しかり、いつも運命に抗えない人間像や愛の形をその作品の中で描き続けているパトリス・ルコント監督。この最新作では主演にフランスロック界の重鎮ジョニー・アリディを起用し、いつにない益荒男ぶりの切り口で新たなルコント幻想ワールドをみせてくれている。

ジョニー演じるミランは、ある日ある小さな町の人気のない駅に降り立つ。初めて訪れたこの町で、彼は人の良さそうな初老の男マネスキエと知り合う。冒険人生を歩んできたミランとその対極の生活に漫然としているマネスキエ。年も生き方も全く違うこの二人が引き寄せられたのはある一つの理由があったから。二人は、おそらく命をかけることになるであろう、それぞれの大仕事を3日後に控えていた。

人がそれぞれの理由で死を意識したときふと湧き上がる自分の運命から脱線したくなる羨望がヨーロッパ特有のブルーグレーと日向色の光線が交差する幻想的映像世界の中、きれいだけれどちょっと憂鬱な夢を見ているかのように描かれる。ルコント作品に特徴的な時と場所を限定しない“不思議な感じ”と郷愁は今回も相変わらずそこにあるのだけれど、男臭さをこうも感じさせる作品は今までにない。(男の欲望ならいくらもみせてもらったと思うけれど。)

それにしてもやはりルコント映画といえばジャン・ロシュフォール。今回のマネスキエ役にしたって彼以外に誰がいただろう?彼のような確固たる名脇役がいるからこそ、ジョニーも主役になれるってものだ。

Text:Yukiko Kodama

Other Reviewer's Comment:
『列車に乗った男』というタイトルが好きだ。こじんまりとしていながら上質な、この映画にぴったりだと思う。さびれた町に男が二人。そこにファンタジックなスパイスをほんのひと振り。シンプルなストーリーが二人の男の私的な部分を際立たせる。いい映画です。

Text:nakamura [UNZIP]


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『列車に乗った男』
2004年4月10日よりBunkamuraル・シネマにて公開
(2002年/フランス・ドイツ・イギリス・スイス/1時間30分/配給:ワイズポリシー)


CAST&CREW:
監督:パトリス・ルコント
出演:ジャン・ロシュフォール、ジョニー・アリディ、イザベル・プチ=ジャックほか


REVIEWER:
Yukiko Kodama
nakamura [UNZIP]


EXTERNAL LINK:
『列車に乗った男』公式サイト