Spring, Summer, Fall, Winter...and Spring
心と目で観る自然美の世界

REVIEW:
幼年期の春、思春期の夏、成人の秋、壮年期の冬、そして再び訪れる春。四季になぞらえたある人物の人生を、観客はその人物と共に旅することになります。絵画のような美しい自然の中で物語は描かれていきますが、現実の世界がそうであるように、決して美しいだけが人生でないことをあらためて感じさせてくれます。邦題はとてもストレートなものですが、これはオリジナルの直訳。何か意味のある題を付けずにシンプルにした訳には、人間が抱える業や欲望、恋、憎悪といった感情を、タイトルに惑わされることなく、よりストレートに感じて欲しかったからなのかもしれません。

監督・脚本・編集は『悪い男』や『魚と寝る女』のキム・ギドク。過去の作品からすると、キム・ギドク=暴力&性的虐待というイメージがつきまといがちですが、本作では一転して“癒し”の要素が多く含まれた作品に仕上がっています。とはいえ、もちろん毒っ気やアクのあるキム・ワールドは健在。例えば、作品中に登場する老僧と子供はいくつかの作法に沿って生活していますが、そのほとんどが虚構の所作だったりとか、老僧が修行を重ねることで不思議な力を身につけたりとか、壁のない空間とか、湖に浮かぶ建物だとか、命の絶ち方だとかが、美しい景色の中で、虚構と現実に境目のない世界をさらりと描き出してるあたり、やはりくせ者なんだろうなあと思ってしまうわけです。

韓国映画界最高の栄誉である「大鐘賞」「青龍賞」最優秀作品賞を制覇し、アメリカやヨーロッパでも上映され、韓国映画としては異例の世界的大ヒットを放ったという本作。オリエンタル&エキゾチックな世界観が受けたことに加え、誰もが共感できる人生のエピソードが心にズシーンと来るのでしょうね。淡々とした雰囲気の奥にある“生きる”ことの熱さを感じたい一本です。

Text:UTAMARU (KinoKino)

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『春夏秋冬そして春』
2004年10月30日よりBunkamuraル・シネマにてロードショー
(2003年/ドイツ=韓国/102分/配給:エスピーオー)

CAST&CREW:
監督・脚本・編集:キム・ギドク
出演:オ・ヨンス、キム・ジョンホ、キム・ヨンミン/ハ・ヨジン、キム・ギドクほか

REVIEWER:
UTAMARU

EXTERNAL LINK:
『春夏秋冬そして春』公式サイト