Christmas Christmas
聖夜の東京に巨大ウナギ状怪獣出現、頭部は犬のようです、ああっここで中継が(ブツン、ザー)……ってな話では全くありません。倦怠期カップルに捧げる、ハートウォーミングなとぼけたクリスマス・コメディ。とにかく伊藤歩を観よ!

REVIEW:
伊藤歩萌え〜! ってなアイドル映画としてオススメしたい。無意味に小津映画な正面撮りが多用されてるので、見つめられて話されてる気分(女子アナ萌えみたく)になれるし、もちろん彼女のいろんな表情がアップで愉しめるし、おまけにサンタ・コスプレもあるし、お色気(ないけど[笑])シーンもちょっとあるし……。なによりアドリブかマジボケかわからん大倉孝二の独特の間合いに、素で笑ってるかのように楽しそうに演じる伊藤歩の“可愛さ”こそが、本作最大の見どころだと思うのであった。いや 「アイドル映画」といっても、単にアイドルの映画ってワケじゃない。宮崎あおいにおける『パコダテ人』、田中麗奈における『ドラッグストア・ガール』、杏さゆりにおける『オーバードライヴ』(ん?)が第一に“若手映画女優のためのアイドル映画”であるって意味で、だ。それらについてくる函館観光PRとか熟年ラクロス町起こしとかヤング向け津軽三味線PRとかゆー余計な広告代理店的ギミックは、全て彼女達に奉仕する為の、「食玩のお菓子」のよーなものなのだ! ま、田中麗奈の『DSG』には、ヨン様に対する“ファン=家族”愛ってのに似た脚本家や監督の田中麗奈愛が過剰にあって本筋を破壊するかのようなのではあるが……。ちがくて、伊藤歩における『クリクリ』の話だった。

ま、ぶっちゃけるとストーリー自体はマジたわいのない話である。UFOだの河童だのネッシーだの人面魚だの、はたまた呪いだの魔法だの予言だの超能力だのってのは(総称して「ハイ・ストレンジネス」というのだが)、世の中に「うるおい」を与えているから必要なのだ!って前提がまずあって。んで世界中に支部がある秘密結社「ファンタジー保存協会」世田谷支部の陰謀(笑)に、同棲4年目の26歳の倦怠期カップル(大倉と伊藤)が巻き込まれるって展開となる。ファンタジーの年中行事の中でも最大のイベントがクリスマスだってんで、難病のガキんちょも絡んで感動系を意識しつつ、サンタ実在説を「保存」するために奮闘することになるのだ。

あ、でもキャッチコピーで「うなぎ犬、発見・しかも聖夜に。」ってあったので、戦後最大のギャグ漫画家である赤塚不二夫が生んだ、あの偉大なクリーチャーがクライマックスに大活躍するのか!?ってすっごい期待した……人は、たぶん怒ると思う。それでなくても河童だのサンタだの、モロ『電波少年』とネタ被りだったり、眉毛犬が今さら流行ってたりするし、オイオイと呆れるセンスの古さなのだから……。

WAHAHA本舗の『ラブストーリー11』(99)ってオムニバス芝居の一編「大魔人怒る」を元ネタに、原作者の俳優兼脚本家のすずまさが映画用に膨らましたもの。あ、監督はなんかCM畑の人みたい。で、柴田・久本をはじめWAHAHAの連中が総出で盛り立てて、関西小劇場界から飛び出た古田新太&生瀬勝久が調子を整え(?)るってワケ。小劇場演劇人脈バクハツってのがマニア心をそそるのに、もうちょっとまともなホンは書けなかったのかなぁ………。

気を取り直して。主演はナイロン100℃の看板役者、というか飛び道具(笑)俳優のひとり大倉孝二(NHK大河『新選組!』では河合耆三郎役、他TVドラマだと『ぼくの魔法使い』『アフリカのツメ』など、映画は『ピンポン』『g@me.』『ジョゼと虎と魚たち』『天国の本屋〜恋火』『スゥイングガールズ』『きょうのできごと』など)! でも真の主演はやっぱり伊藤歩(『水の旅人』『スワロウテイル』『カンゾー先生』『のど自慢』『リリイ・シュシュのすべて』『ふくろう』『きょうのできごと』『雨鱒の川』『理由』『カーテンコール』など。あ、彼女まだ24歳じゃん)!! しかしクレージーケン・バンドに氣志團が挿入歌・エンディングって……代理店的発想にもほどがあるなぁ。と、怒りを通り越して呆れつつ、とにかく伊藤歩を観に、劇場に行って欲しい。以上。

Text:Hidemaro Kajiura

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『クリスマス・クリスマス』
2004年12月4日より渋谷シネ・アミューズにてレイトショー、他全国順次公開
(2004年/日本/1時間32分/配給:クロックワークス)

CAST&CREW:
監督:山口博樹
原作・脚本:すずまさ(WAHAHA本舗)
出演:大倉孝二、伊藤歩、古田新太、生瀬勝久、近藤芳正、水橋研二、柴田理恵、久本雅美、マギー、梅垣義明、佐藤正宏、他

REVIEWER:
梶浦秀麿

EXTERNAL LINK:
『クリスマス・クリスマス』公式サイト