スペイン内戦の時代を舞台に、アメリカ育ちの少女キャロルが母親の故郷であるスペインの田舎町で過ごした1年間を綴った感動作 『キャロルの初恋』。ボーイッシュな主人公キャロルを演じたのが、初来日を果たしたクララ・ラゴさんです。撮影当時は11歳でしたが、現在は14歳。インタビュールームに現れた彼女は見違えるほど、オトナに成長しておりました。本作でゴヤ賞(スペインのアカデミー賞)の新人女優賞にノミネートされたスペイン映画界期待の女優さんに早速インタビューです。
主演が決まったときの気持ちは?
はじめはとても信じられなくて、本当の事なの? ってびっくりしました。

キャロル役に決まるまでも大変だったとか?
最初は新聞でヒロインを募集している記事を見たんです。イマノル・ウリベ監督の作品だったので、ぜひ出演したいと思いましたが、条件として、金髪で青い目で2ヶ国語をしゃべること、というのがあったので諦めてましたけど、カメラテストのお誘いがあったんです。そのとき、相手役の男の子(トミーチェ役のフアン・ホセ・バジェスタ)は前から知っていたので、2人のシーンをテストしたんです。それ自体はいいと言われたんですけど、私の顔や表情はどう見てもスペイン人なので(笑)、髪の毛を切って少しでもイメージに近づけるように、と言われたので、髪を短くしたんです。

撮影時の想い出は?
撮影から随分経ってしまって、なかなか思い出せないんですけど、自分が覚えている一番のエピソードは、カットされてしまったシーンで(笑)、キャロルが水兵服を着て教会に行くと、その服が小さくて子供たちに笑われるシーンがあるんです。それで、キャロルは男の子を叩くんですけど、子役の男の子をどのくらい叩いていいかわからなかったので、弱くやっていたら、監督が「もっと、もっと!」って言うんです。それで、3回目くらいに思い切りほっぺたを叩いたら、監督たちが“今のは痛いよ”って(笑)。そのまま撮影は続いていたのでこらえなければならなかったんですけど、とても悪いことをしたなーって思いました。
キャロルという女の子について
キャロルというキャラクターは、ニューヨークから保守的なスペインの田舎に行きます。三つ編みをしてスカートはいている女の子たちの中へ、短い髪にジーンズで入って行くんです。すごくおてんばな女の子、というイメージをもちましたね。それと同時に、気持ちを内に押し込めた感情をあまり外に出さない女の子だと思います。でも、スペインでおじいさんたちととの出会いやトミーチェと親しくなっていくうちに、少しずつ心を開いて、女性的な部分が表に出ていきます。私がキャロルと似ていると思うのは、最後の女性的な面が出たキャロルですね。

キャロルとトミーチェのそれぞれの魅力はどこ?
キャロルの魅力は、周りがなんと言おうと関係なく、自分自身が思った事を突き通そうとする強さが魅力だと思います。周りに合わせることもないですし。私がすごく好きな場面は、キャロルがトミーチェたちとケンカしている場面ですが、女の子だからこうしないといけない、というのがなくて、男の子にもケンカをふっかけるところは魅力的ですよね。トミーチェも非常に強い男の子だと思うんですが、おじさんに叩かれたりしながらも心の奥に深い優しさがあって、自分に対して尊厳を持っている所が男の子として魅力的だと思います。

キャロルのスペインでの生活は彼女にどんな影響を与えたと思う?
スペインに着いた時には本当に子供子供していたのが、色んな事を経験して女性として大人になっていくという所に大きな影響を与えたと思います。戦争や内線、ファシズムもそうですし、母親の死や彼女が一人でしなければならないことなどが、彼女を大きく成長させていると思います。ニューヨークに帰っても、きっと今までと同じではいられないと思います。
EL VIAJE DE CAROL
イマノル・ウリベ監督について
たくさんの監督と仕事をしていないので他の監督とあまり比べられませんが、ウリベ監督に関しては一度も怒鳴り声を聞いたことはないですし、とても優しくて柔らかな話し方をする監督です。役者にストレスを与えないような、楽しくて暖かい雰囲気の現場にしてくれる監督でした。

女優になったきっかけ
ずっと女優になりたかったんですけど、一番始めは9歳の頃で、両親の知り合いに映画製作をしている人がいたので一人で訪ねていって「テストさせて欲しい」とお願いしたり、両親には脚本家の知り合いもいたので、関係者の人にオーディションがあったら受けさせて欲しいとお願いしたりもしました。製作者の所ではカメラテストや写真を撮って宣材にしてもらったり、脚本家のところではその方を通じてオーディションを受け、小さな役をもらいました。

日本の印象は?
まだ着いて間がないのであまり見ていないのですが、とてもワクワクています。東京を知りたいし、浅草にも行きたいですね。人を見ていると面白いので、東京の若い人たちを観察してみたいです。昨日は“NINJA”というレストランに行ったんですけど、すごく面白くて気に入りました。今回、本物の日本食を食べてみて、とっても好きだということがわかりました。日本にいる間は、ずっと日本食を食べていたいと思います。
初恋の想い出
好きな人はいるんですけれども、映画のふたりのような強い絆を持った初恋は、まだ自分のところにはやって来ていません(笑)。

今後の目標と、憧れの女優は?
私の目標はいい女優になることがゴールです。よい作品、よい役を選択していけるような女優になりたいです。憧れの女優はいっぱいいますけど、ニコール・キッドマンをいつも一番に名前を挙げます。彼女はとても綺麗ですが、美しさだけではなくて、演技力もあっていろんな役を選びながら仕事をしている人だと思います。あと、ミシェル・ファイファーやスーザン・サランドンのような演技派の女優にも憧れていますね。
Text&Photo:うたまる

『キャロルの初恋』EL VIAJE DE CAROL
2004年1月22日よりシブヤ・シネマ・ソサエティにて公開
(2002年/スペイン/104分/配給:東京テアトル、ポニーキャニオン)

監督:イマノル・ウリベ
出演:クララ・ラゴ、 フアン・ホセ・バジェスタ、 ロサ・マリア・サルダほか
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