三木監督について
:三木監督と仕事をしてみて、舞台をやってきた人なんだなーと思いました。演技に対する目配りがとても利いているので、助かるとともにそこは怖い部分でもあるんです。演じている途中でちょっと失敗をしたと思っても頑張って最後まで台詞を言ってみますが、そういうところはきちんと見ているから、カットの後、「ダメでしたね」って言われちゃうんですよ(笑)。
松尾スズキについて
:松尾さんは舞台を通じて知っていたし、彼の演技の凄さも知っていましたので、基本的なポテンシャルとか彼の手触りみたいなものは映画の中でも生かさせて貰いました。ただ、良い意味で、カメラの前で演技する松尾さんを見て、舞台で持っていたイメージとはまた違う部分があるんだなーって思ったこともありました。
舞台と映画の演技の違いについて
:舞台と映画で演技の仕方は違いますけど、今回の作品はどちらかというと舞台の感じに近かったですね。いつも舞台では過剰なことをやりたがりますから(笑)。映画では演技をなるべく抑えた方が良いと思っているので、普段は割と何もしない方向で演技してますが、今回は何かやらないといけないような雰囲気だったんですよ。
役作りについて
:最初に三木さんと会ったときに、自由に演技できることの確認とかオチの打ち合わせはしましたよね。
:それに、その場のことにだけ反応する人という設定とかね。役作りをする際に、最初から最後まで一本線を作って、この役はこんなことを言わない等と決める場合もありますが、それはやめましょうということになりました。松尾さんから“自由”というキーワードをいただいていたので、相手をする患者やその場の雰囲気で伊良部の行動や考え方が次々と変わっても良いと思ったんです。伊良部のキャラクター作りは、僕が責任を持って動きの指示をとったり、松尾さんが作品中でそのキャラクター性を更に伸ばしてくれたりと、共同作業で出来上がっていきました。一貫性のないキャラをまとめるだけのムードや演技者としての力量を松尾さんはお持ちだと思ったので、僕はまったく心配することはなかったですね。

イン・ザ・プール
作品中のアドリブについて
:よくどこまでアドリブですか?って聞かれますが、僕と松尾さんの考えの中で出来上がったものだし、松尾さんの持っている役者としてのポテンシャルもあるので、アドリブに見える部分はあくまでも二人の共同作業だと思います。舞台「イケニエの人」とか見ると松尾さんはとにかく凄いんです。松尾さんが出てきたときの独特の手触りとか空気感は「何だこれは?!」って思うぐらい魅力的なんですよ。実は最初、松尾さんと接したときに不思議な違和感を感じていましたが、その違和感にだんだんはまっていくんです。映画の伊良部もそうなってくれれば良いなあって思っていました。
:僕は、脚本に書いてある台詞以外に余計なことは言ってないと思いますよ(笑)。アドリブに見えるようなことも細かく台詞に書いてありますからね。っていうことは、アドリブ言うなってことなのかな?なんて思ったりもして(笑)。
:松尾さんが動きでプラスアルファして膨らませてくれましたね。僕の考えとして、その演技がアドリブなのか判断付かない状態が理想なんですよ。だから、アドリブなんですか?と尋ねられるというのはとても嬉しいことですよね。この人、本当にくだらないことを言ってるな…って、観客が本当に思ってくれているってことじゃないですか。計算しながら演じた上で、アドリブのように見える役者さんと一緒に仕事できたことはとても幸せです。
:映画観てて、ここはシナリオ通りだろう、ここはアドリブだろうっていう区別が付いたら、それはダメだって言うことですよね。たまに映画を観ていて、監督に「ここはおまかせで…」って言われてアドリブしてるんだろうなーって思うシーンがあったりしますけど、その区別が付いてしまうことはあまり品のよろしくない事なんじゃないかなって思います。
共演者との演技について
:出番や台詞が多かったから、いきなりカメラの前で演技するのはしんどいな〜と思ってましたけれど、三木監督がリハーサルの期間を設けてくれたので、とてもやりやすかったですよ。演技の話は先ほどありましたが、リハーサルの間に出来上がっていったことが多かったですね。ある動きをしていて、別の動きに移りながら台詞を喋るってとても大変な事なんですよ。全身で覚えないと出来ないようなことだったりもするので、リハーサルがあったことは本当に助かりました。
:松尾さんといろいろな役者のセッションとでも言いましょうか、演技の仕方が違う役者さんを全て松尾さんが受け止めなければならないですからね。もちろんみんな同じテイストではつまらないですし、伊良部のキャラクターを維持しつつ、芝居のやりとりをしなくてはならないことは、とても大変なことだろうな…なんて、客観的に僕が言う事じゃないですよね(笑)。
:僕的にはやりやすい役者さんばかりでしたよ。市川さんもオダギリさんも。芸能人臭の少ない人たちだし(笑)。カメラに映っていない時間を過ごしやすい人達とは、カメラの前で演技するときにやりやすいんですよね(笑)。
:それに、その場のことにだけ反応する人という設定とかね。役作りをする際に、最初から最後まで一本線を作って、この役はこんなことを言わない等と決める場合もありますが、それはやめましょうということになりました。松尾さんから“自由”というキーワードをいただいていたので、相手をする患者やその場の雰囲気で伊良部の行動や考え方が次々と変わっても良いと思ったんです。伊良部のキャラクター作りは、僕が責任を持って動きの指示をとったり、松尾さんが作品中でそのキャラクター性を更に伸ばしてくれたりと、共同作業で出来上がっていきました。一貫性のないキャラをまとめるだけのムードや演技者としての力量を松尾さんはお持ちだと思ったので、僕はまったく心配することはなかったですね。
笑いのセンスについて
:僕はもともとシティボーイズのファンで、三木さんが演出をされているあのテイストが好きだったんです。とぼけたと言うか、そのテイストの上手い言葉がなかなか見つからないんですけどね。
:とぼける技術っていうのが好きなんです。最近はとぼけたおじさんって減りましたよね。戦争直後にはとぼけたおじさんが多かった…と言う説をあげている人がいて、なるほどと思ったんです。
:トニー谷とかね。
:そうそう。映画とか観ていて、このおじさん本当に馬鹿なんじゃないの?って思える感じのとぼける技術ってありましたよね。ですから、松尾さんに新しいカタチでとぼけを開拓してもらいたいって思いますよ(笑)。伊良部を見ていると、自分で監督していながらも、コイツは本当に信用出来ないよなぁ〜って思いますもんね。でもそれって、新しいとぼけの技術なんですよ。受け入れられるには時間がかかるかもしれないけど、やっていく価値はあるなーって思いました。親戚に一人は必ずとぼけたおじさんがいたものですけど、最近はいないですもんね(笑)。
:おじさんでそういうおかしいことをやりたがる人はいなくなりましたよね。いなくなっただけなのか淘汰されたのかは分かりませんけど。ギャグって若者のものになっちゃってるんですかね。

イン・ザ・プール
もし次回一緒に仕事をするとしたら?
:やっぱり天然とぼけ路線ですかね(笑)。
:それを出来る人がなかなかいないと思うんですよね。もし次の作品を撮る機会があったらぜひまたお願いしたいです。それに、松尾さんの『恋の門』も大好きなので、次の監督作が作られるのでしたら、ひとりの観客としてとても楽しみにしています。
イン・ザ・プール
2005年5月21日、テアトル新宿、シネセゾン渋谷ほか全国ロードショー
2004年/日本/カラー/101分/配給:日本ヘラルド映画
脚本・監督:三木聡
出演:松尾スズキ、オダギリジョー、ちはる、戸田昌宏 他
松尾スズキ 今後のスケジュール
「キレイ〜神様と待ち合わせした女〜」(作・演出/松尾スズキ)
東京公演:7月6日(水)〜30日(土) Bunkamuraシアターコクーン  お問合せ:Bunkamuraシアターコクーン 03-3477-3244
大阪公演:8月7日(日)〜12日(金) シアターBRAVA!   お問合せ:06-6233-8888
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