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『焼け石に水』Water Drops on Burning Rocks

フランソワ・オゾン監督のコミカルで毒のある室内愛憎劇

“より多く愛するものは常に敗者となる…” これは「焼け石に水」のキャッチコピー。ドキリとさせられるこの言葉は、残念だけど真実なのかもしれない。

可愛い20歳の青年フランツと暴君的なバイセクシャルの中年男レオポルド、レオポルドの昔の恋人で性転換したヴェラ(アンナ・トムソン)、フランツの婚約者で殆どのシーンに裸で登場する天真爛漫なギャルのアナ(リュディヴィーヌ・サニエ)。登場人物だけ見ると、ものすごく可笑しな作品のようにも思えるが(実際、面白くて笑ってしまう場面も多くあるのだが)、そこにはごく身近なテーマが描かれている。愛の残酷さと絶望感。誰もが多かれ少なかれ、味わったことがあるはずだ。

レオポルドの不思議な魅力にとらわれてしまい、彼を愛し過ぎてしまったフランツ。ヴェラもまた然り。反してヒドい男のレオポルドは常に主導権を握っているし勝者なのだ。

室内劇であるこの作品、全編を通して同じアパートメントの中でストーリーが展開される。登場人物は4人のみ。ヒッチコックの“偉大な試み”を思い出す人もいるだろうが、本作において、この手法は見事に成功している。フランソワ・オゾン監督作品を観たのはこれが最初だけど、本当に巧い。

お洒落なインテリアにも注目して欲しい。寝室にチューリップチェアがさり気なく置いてあったり、60年代テイストでまとめられた室内はとても魅力的。そしてその室内で4人がダンスをするシーンはとてもグラフフィカル!


Reviewer : ayako nakamura

ABOUT THIS FILM

2001年7月21日より渋谷ユーロスペースにて公開(2000年フランス映画 / 1時間30分 / 配給:ユーロスペース )

監督・脚本:フランソワ・オゾン / 原作:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー

出演:ベルナール・ジロドー、マリック・ジディ、リュディヴィーヌ・サニエ、アンナ・トムソン