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『100,000年後の安全』INTO ETERNITY

わたしたちが考えるべき過去と未来の問題

いまなお世界中の原子力発電所から生まれる放射性廃棄物。このドキュメンタリーは、フィンランドにおいて、世界で初めて放射性廃棄物の地層処理が国をあげ決定され、そして22世紀の操業開始を目指し建設されている処理施設の追った作品だ。放射能レベルが生物に無害になるまでに、最低10万年とも考えられているその放射性廃棄物を、通称オンカロと呼ばれるこの施設に保管する。その期間10万年間…。いま現在、世界中に存在する高レベル放射性廃棄物は20〜30万トンともいわれ、現時点では地層処理が最も好ましい方法として認識されている。

しかし、オンカロの施設関係者や科学者などのインタビュー、そして実際のオンカロの内部を撮影した映像によってその実態に迫ると同時に、監督は投げかける。“10万年”という年月が意味することを。いま私たちが暮らすこの豊かな世界、その代償として生みだした危険な放射性廃棄物を10万年保管することが可能だという保障は、この何が起こるかわからない地球においてどこにあるのだろうか?そして、10万年という年月の先に人類がいるのか、もしくは次の世代のなにかが存在するとして、この施設を探索してしまわない保障はどこにあるのだろうか?そもそも、想像も及ばないほど遠い未来へ問題を先送りしてしまうことは許されることなのだろうか。

地中深く穿たれた隧道、無機質に無慈悲にもくもくと動く施設の機械類と防護服を着た作業員たちはとても現実のものではなく、なにかSF映画でも観てるかのような雰囲気すら漂わせている。この作品は2009年に制作されている。おそらく、いまはもうこのように施設内を撮影したり、関係者の雄弁な、率直な意見を聞くことはできないかもしれない。

特筆しておきたいことは、この作品がなにかしらの強い主張、思想をメッセージにしていないということだ。フィンランドにある放射性廃棄物の処理施設オンカロの実態と関係者たちの言葉、いまある現状を刻々とどちらかの立場からではなくニュートラルに切り取ろうとしている。この作品のなかにあるのは、「答え」なのではなく、私たちが抱える「疑問」や「問題」そのものである。それは、私たちがいま考えなくてはならない、ということを意味している。オンカロの存在に対してだけではなく、もっと根本的なことからも。

もちろん、日本に暮らす私たちにとってもこの問題は、先送りにも、目をそらすことも出来ないことだ。多くの放射性廃棄物を生み出してきた“これまで”と“いま”起こっていること、そして、“これから”の問題に対して、私たちは取り組まなければならない。これからの日本、そして世界がどうなっていくのか、その岐路がいまだということは確かなことだと思う。このドキュメンタリーは、日本を含め世界中で多くの人々の目に触れられ、いまなお多くの問いを投げかけている。


Reviewer : yuki takeuchi

ABOUT THIS FILM

(2009年 / 79分 / デンマーク、フィンランド、スウェーデン、イタリア / 英語 / カラー / 16:9 / ビデオ / 配給・宣伝:アップリンク)

監督・脚本:マイケル・マドセン / 脚本:イェスパー・バーグマン / 撮影:ヘイキ・ファーム / 編集:ダニエル・デンシック

出演:T・アイカス、C・R・ブロケンハイム、M・イェンセン、B・ルンドクヴィスト、W・パイレ、E・ロウコラ、S・サヴォリンネ、T・セッパラ、P・ヴィキベリ

TRAILER