UNZIP

『エンディングノート』

是枝裕和もその才能を認めた新たな監督の誕生

是枝裕和や岩井俊二などの作品に参加してきた砂田麻美の第一回監督作品は、実父の最期を見つめたドキュメンタリーだ。

日本の高度成長を支えたサラリーマンとして生きた砂田監督の実父は、会社を退職し第二の人生を歩み始めた。その矢先にガンが発覚。既に末期まで進行したその病ともに、自らの最期を段取りするため、そして残された家族のため「エンディングノート」を作成する。
監督自身が以前から撮りためていたという、膨大な量の家族をとらえた映像などとともに、少しづつ「エンディング」に向かって主人公はすすんでいく。実父の内面を、実の娘である監督自身がモノローグするというちょっぴり意表を突く手法ともに…。

作風からして不謹慎な表現と思われてしまうかもしれないが、これがとにかく面白い。ありがちな「いい話」「泣ける話」に陥らないように冷静にドキュメントし、ひとつひとつのエピソードが丁寧に積み上げられていくのだが、主人公の冗談やふるまいに思わず笑い、ときに表情や言葉に心染み入りながら、あっという間に90分が過ぎ去っていく。監督第一回作品であり、また、いちばん身近な人物を対象にしているにもかかわらず、さすがとしか言えないほどの出来である。是枝裕和にプロデューサーをつとめさせただけのことはある。

この物語の「主人公」とは、監督の実父であることは当然のことながら、同時に実父を見守り続けた監督自身や家族であるとも言えるかもしれない。「エンディング」を迎えるということは、去る者と継ぐ者の両者で遂げていくものなのだと、“ふたつの視点が重なり合う”終幕に思わされた。一風変わったモノローグの手法は、監督として客観的に作品を制作すると同時に、唯一、娘として父親に移入する手法だったのかもしれない。

人ひとりがこの世を去るということを、これほどまでの手触りをもって見せた映像は久しぶりかもしれない。あるひとつの家族の物語が、いつのまにか、普遍的な物語となって語りかけていた。思わず、家族や大切な人を思い出ほどに。


Reviewer : yuki takeuchi

ABOUT THIS FILM

2011年10月1日より新宿ピカデリー他にて全国ロードショー
(2011年 / 日本 / 90分 / 制作:バンダイビジュアル / 配給・宣伝:ビターズ・エンド)


撮影・編集・監督:砂田麻美 / 制作・プロデュース:是枝裕和 / 主題歌:ハナレグミ「天国さん」 / 音楽:ハナレグミ

出演:砂田知昭

TRAILER