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『女と銃と荒野の麺屋』A Woman, A Gun, And A noodle Shop

コーエン兄弟の傑作『ブラッド・シンプル』を大胆にリメイク!

ジョエル&イーサン・コーエン兄弟としてのデビュー作であり、のちに生み出される数々の名作の萌芽が随所に垣間見える『ブラッド・シンプル』。強欲と裏切り、そして復讐。大金と一丁の拳銃が導く運命に翻弄される妻と愛人、夫と探偵。滑稽なほどに哀れな人間性があぶり出されるクライム・サスペンスの傑作だ。コーエン兄弟のファンのなかでも、これをベストとする方も少なくないだろう。この作品がリメイクされる、しかも『初恋のきた道』『HERO』のチャン・イーモウ監督によって、と聞けば誰もが驚かざるを得ないだろう。

チャン・イーモウ監督自身も長年にもわたって“心の1本”と称えつづけてきた思い入れのある作品だという。しかし、このリメイクは途轍もなく大きな冒険だったに違いない。なぜなら、すでにひとつの完成された傑作だ。オリジナルと比べられることからは決して逃れられない。

結論から言ってしまおう。この大きな冒険、さすがチャン・イーモウ、見事に遂げてみせている。

舞台は中国、そして時代物という設定。ストーリーはそのままに、京劇を思わせる極色彩の衣装やスペクタクルな映像と軽妙なセリフ回し。オリジナルを知る方ならあっけに取られるかもしれないほどの換骨奪胎だが、これが実に巧く効いている。ラストに向かってスリンリングさを増すストーリーの面白さはもちろんだが、この設定の変換によって、作品の主題でもある人間の欲深さや哀れみが、オリジナルとはまたひと違った味わいを醸し、観ているうちにいつのまにか引き込まれてしまう。また映画史に語り継がれるあのクライマックスが、本作ではどのように描かれているかは、最大の関心事であることだろう。そちらも是非観て確かめていただきたい。もちろん、オリジナルを未見の方でも充分に楽しめることうけ合いだ。


Reviewer : yuki takeuchi

ABOUT THIS FILM

2011年9月17日 (土) より、シネマライズほかにて公開
(中国映画/2009年/90分/カラー/ 2.35:1/ドルビーデジタル/配給:ロングライド)

監督:チャン・イーモウ

主演:スン・ホンレイ、シャオ・シェンヤン、ヤン・ニーほか

TRAILER