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『ロンドン・ブルバード −LAST BODYGAURD−』LONDON BOULEVARD

『ディパーテッド』の脚本家が描くブリティッシュ・ノワール

マーティン・スコセッシ監督作『ディパーテッド』の脚本を書き、アカデミー賞最優秀脚色賞を受賞したウィリアム・モナハンが、ノワールの詩人とも呼ばれるアイルランドの作家ケン・ブルーエンの小説を脚色して監督デビューを果たした『ロンドン・ブルバード』。

3年の刑期を終えて出所、ギャングの世界から足を洗い、再出発を心に決めるミッチェル(コリン・ファレル)。しかし、昔からの悪友や酒とドラッグ好きの妹ブライオニーなどしがらみからなかなか抜け出せないでいる。ふとしたきっかけから紹介された仕事は、引退した若い有名女優シャーロット(キーラ・ナイトレイ)の雑務係兼ボディーガードだった。執拗で不躾なパパラッチ、街に出ればつねに視線が付き纏う彼女は、周囲に対しても心を閉ざしがち。ミッチェルはギャングのボスから目をつけられ、シャーロットは過去の呪縛からから逃れられないという、共通した運命を背負ったふたりは、必然ともいうべき恋に落ちていく。そしてふたりが自由を獲得するために動き出すとき、物語大きくも動き出す。

イギリス映画のひとつの歴史とも言えるギャング/ノワール映画。いままで生み出されてきた数々の作品ともひと味ちがった印象を残すのは、この作品自体がもつ「落ち着き」だろう。コリン・ファレル、キーラ・ナイトレイといったふたりの人気スターの共演に派手になりがちなところを抑え、細部にもこだわった演出をみせる。

アイルランド生まれのコリン・ファレルにロンドン郊外生まれのキーラ・ナイトレイ。劇中の音楽はカサビアンのセルジオ・ピッツォーノが手掛け、ヤードバーズやローリングストーンズのヒット曲から伝統的な民謡までもが本編を彩る。また劇中に登場するシャーロットの写真は、ミケランジェロ・アントニオーニの『欲望』のもとにもなった写真家デイヴィッド・ベイリーによるもの(デイヴィッド・ベイリーは、デヴィッド・ボウイやミック・ジャガーのポートレイトも有名で60年代にVOUGEなどでも活躍。個人的はこの起用にはグッときてしまう)。また、デビュー作『ワールド・アパート』(’88)でカンヌ映画祭審査員グランプリを受賞したクリス・メンゲスが撮影監督を担い、いまのロンドンを鮮やかに写し取っている。

どこにでもいそうなやぼったい服装や“仕事”を遂げるときのビシッと決まったスーツ。ミッチェルがTPOによって纏う衣装もなかなか味があっていい。キーラ・ナイトレイは、役ではなく本人のそれにすら見えるほど、まさに“オフの女優”といった趣がどこまでもナチュラルで、また美しい。

イギリスの曇り空のように、抑制の効いた映像に細やかな演出。また、この“空”が物語を象徴していてなかなかニクい演出にもなってもいる。バイオレンスやラブストーリーといった路線に偏りすぎず、イギリスの社会や若者、失業者、セレブリティとマスコミの実情なども描き、物語の締め方もなかなかハードボイルド。なかなかの味わいを残してくれる作品だ。


Reviewer : yuki takeuchi

ABOUT THIS FILM

12月17日 (土) ヒューマントラストシネマ渋谷ほかクリスマス全国ロードショー!
(2010年 / イギリス / ビスタサイズ / 英語 / 104分 / 配給:日活)

監督・脚本・製作:ウィリアム・モナハン / 原作:ケン・ブルーエン「ロンドン・ブールヴァード」 / 音楽:セルジオ・ピッツォーノ / 撮影監督:クリス・メンゲス / 美術:マーティン・チャイルズ

出演:コリン・ファレル、キーラ・ナイトレイ、デイヴィッド・シューリス、アナ・フリール、ベン・チャップリン、ジェイミー・キャンベル・バウアー、オフィーリア・ロビボンド、ステファン・グラハム、アラン・ウィリアムズ、レイ・ウィンストン

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