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『マーガレットと素敵な何か』L'Age de raison

“わたしらしいわたし”になりたいすべての女の子に

女の子が好きな可愛らしいものをコラージュしたようなオープニングタイトルがとにかく可愛い! リサ・ミッチェルの歌う主題歌(Neopolitan Dreams)もまたぴったりで、なんだかとても好きなタイプの映画だという予感。一部の批評家の方の厳しめの意見なども読んでいたので観る前には大きな期待はしていなかったのだけれど、俄然楽しみになってしまった。

後で思えば、本作のヤン・サミュエル監督初長編作品『世界でいちばん不運で幸せな私』も、ぶっ飛んだストーリーに賛否あったけれど、カラフルで可愛い映像が印象に残っている。この監督、イラストやグラフィック、絵本などの分野でも活躍しているそうで、なるほどと納得した。

ソフィー・マルソー演じる主人公のマーガレットは、成功したキャリアウーマンで野心家。つねに仕事を最優先にする、典型的仕事人間という役柄だ。でも「今日はココ・シャネル」「エリザベス・テイラー」「マリア・カラス」など、場面によって憧れの女性をイメージしてやり過ごしている様子は「デキるわたし」を演じているみたいにも見えて、どこかチャーミング。そんな彼女の40歳の誕生日に、7歳の自分からの手紙が届く(この手紙の凝ったコラージュがガーリーでとても可愛い)。これをきっかけにマーガレットは過去と向き合い、やがて「ほんとうになりたかった自分」を見つめ直す。可愛いだけの映画ではない、なかなか深い、いいお話なのだ。

子どもの頃に夢みたままの大人になっている人は、残念ながらそう多くないだろう。それでもその夢が現在に少しでもつながっていたら、それはとても幸せなことだ。ほとんど誰もが、大人になる過程でいくらかの妥協を覚えて、折り合いをつけて生きているのだと思うから。でも、その時よりも大人になったいまなら、もっと上手く“わたしらしいわたし”を生きられるのかもしれない。そんなことを後から色々と考えてしまった。

原題は “L’Age de raison”。「分別のつく年頃」という意味だそうだが、邦題がとてもいい珍しいケース。邦題は「マザー・グースのうた」のこんな一節から来ているそうだ。

“女の子は何で出来てるの? 砂糖 スパイス 素敵な何か そんなこんなで出来てるわ。”


Reviewer : ayako nakamura

ABOUT THIS FILM

2011年10月29日、シネスイッチ銀座ほかにて全国順次ロードショー
(2010年 / フランス・ベルギー / 89分 / 配給:アルシネテラン)

監督・脚本:ヤン・サミュエル

出演:ソフィー・マルソー、マートン・ソーカス、ミシェル・デュショーソワ、ジョナサン・ザッカイ、エマニュエル・グリュンボルド、ティエリー・アンシス、ジュリエット・シャペイ ほか