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『マイブリッジの糸』

「時間」と「愛」に関する儚くも美しい映像詩

『頭山』や『カフカ 田舎医者』など数々のアニメーション作品が世界中から高い評価を受ける、山村浩二監督による4年ぶりの作品『マイブリッジの糸』。

本作は、1878年にギャロップ(疾駆)する馬の姿を連続動作として撮影することに成功し、写真や映像のなりたちに大きな影響を与えた、写真家エドワード・マイブリッジの波乱に満ちた人生と、東京に住むとある母娘の幻想的なひとときが、ある“糸”によってつながり、そして紡がれていく、「時間」と「愛」に関する儚くも美しい映像詩だ。

時間という一瞬をつかまえたいと歴史的な発明を生んだマイブリッジが、つかまえておくことが出来なかった「愛」。永遠のようにも束の間のようにも思える母と娘のつながり。そして、逆から弾いても同じ曲になる“逆行カノン”とよばれるJ.S.バッハの「蟹のカノン」によって、さまざまな感情が呼び起こされ、そして彩られていく。

この作品は数多くの名作を生み出してきたNFB(カナダ国立映画制作庁) による制作であり、日本人では山村監督が初となる。また、『木を植える男』などのフレデリック・バック作品を多く担当してきたことでも知られる巨匠ノルマン・ロジェによる音楽が担当してることも特筆すべきところだ。

過ぎ去ってしまう「時間」や「愛」は、いつの時代も、そしてこれからも永劫変わることのない儚さを湛える故に、美しくも力強くもある。それは、一瞬にして目の前を高速で過ぎゆくフィルムの残像がアニメーションとして存在していることにも通じてくる。そんな思いをも呼び起こしてくれる、この12分38秒はただ一方通行に過ぎ去る12分38秒では終わらないだろう。

是非、劇場にてその一過性を味わいながら、詩的であり哲学的でもある数々の心に残るシーン味わってほしい。マイブリッジが、必ず観る者の琴線を優しく爪弾いてくれるに違いない。


Reviewer : yuki takeuchi

ABOUT THIS FILM

2011年9月17日より東京都写真美術館ホールにてロードショー
(2011年/カナダ・日本/12分38秒/セリフなし/字幕:英語、日本語/カラー&白黒)

監督、脚本、編集、デザイン、アニメーション:山村浩二/オリジナル音楽、サウンドデザイン:ノルマン・ロジェ、ピエール・イブ・ドラポー、ドゥニ・シャ ルトラン/J.S.バッハ「蟹のカノン」/編曲:ノルマン・ロジェ/エグゼクティブプロデューサー:デヴィッド・ヴェロール、斉藤健治、塩田周三/プロ デューサー:マイケル・フクシマ、土橋圭介、塩田周三/製作:NFB、NHK、ポリゴン・ピクチュアズ

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