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『5windows』

小さな瞬間と記憶の重なりが生む、映画と街と日常の出会い

ある夏の日の14時50分に横浜・黄金町ですれ違う4人。緑に淀んだ川とそれに沿って走る赤い電車、川に架かる橋とそれらを見下ろす建物の屋上。それぞれの視点から語られる4つのその瞬間。4つの視点が、少しずつ交錯していくにつれて、ある景色が浮かび上がってくる。それは彼らの記憶なのか、幻影なのか。もっと別のなにかかもしれない…。日常にたたずみ、別々に流れていたそれらがふとしたことから絡み、重なり合う…。そんな瞬間をきりとった小さな物語。

なにかが次第に像を結んでいく感覚、移動する/その場に留まる人物、上下左右から捉えられる彼らの視点の交錯、次第に重なり合いそして高鳴る音楽、それらを捉える瑞々しい映像。そして、その先にひらける景色は、観客と映画の関係によって作られる。それは観る人によって、様々な感覚を呼び覚ましてくれるだろう。40分の短編にも関わらず、これこそ純粋な映画体験だと言えるような豊かさに満ちている。

出演する中村ゆかり、斉藤陽一、長尾寧音、染谷将太の振る舞いや表情、視線(目)の演技。心の琴線をふるわすような蓮沼執太の音楽。そして、瀬田なつき監督らしい映像の遊び(実験性)や美しさ、色の使い方と編集の巧みさ。それらの調和が本当に素晴らしく、観ているだけで、なぜだかしあわせな気持ちになってくる。

この『5windows』は、2011年10月に、”港のスペクタクル”のアートプログラム、Cinema de Nomad「漂流する映画館」として制作された。横浜・黄金町で撮影された。5つの短編を4箇所の屋外、1箇所の映画観で上映された。のちに、2012年5月には、東京・吉祥寺で上映し、その際に、劇場用編集版としても上映。そして、2012年の秋には劇場用編集版が渋谷からはじまり、全国の映画館へ「漂流」をはじめる。

登場人物が体験したような、その街で、その時間、記憶、幻影を他者と共有している(ような)感覚と瞬間。それは、まさに映画館で映画を観るということに似ている。

さらに、この映画が行ってきた野外上映や「漂流する映画館」など実験的な試みは、登場人物たちが体験した日常のなかの過ぎ去っていく、“一過性”の瞬間を作り出し、わたしたちに味わったことのない映画体験を与えて、日常のなかの記憶に残してくれるだろう。


Reviewer : yuki takeuchi

ABOUT THIS FILM

10月27日(土)〜11月9日(金)オーディトリウム渋谷にてロードショー!

(2011年 / 日本映画 / 16:9 / 40分)
配給:boid

監督・脚本・編集:瀬田なつき / 撮影・制作:佐々木靖之 / 録音・整音:藤口諒太 / 音楽:蓮沼執太

キャスト:中村ゆかり、斉藤陽一、長尾寧音、染谷将太

TRAILER