UNZIP

『アーティスト』The Artist

アカデミー賞5部門受賞の“新作”モノクロ・サイレント映画

アカデミー賞の作品賞を含む5部門受賞で注目を集めた『アーティスト』。白黒のサイレント映画であることや、フランス映画が初の作品賞受賞ということでも話題になった。『アーティスト』が外国語映画部門でなく作品賞にノミネートされたのは、台詞のないサイレント映画であるためで、実際のところ観ているときにはこの作品がフランス映画だとは思いもしなかった。それほどに、フランス人の監督とキャストがハリウッドで撮影したこの作品は、まるで黄金時代のハリウッド映画そのものなのだ。

本作の感想を一言で言うとしたら「What a surprise!」。大好きな黄金時代のハリウッドの“新作映画”にいま出会えるなんて、もう二度と会えないと思っていた古い友人に思いがけず再会したような驚きと、予期しない素敵な贈り物をもらったような喜びに、思わず涙がこぼれてしまった。

あとから資料を読んでミシェル・アザナヴィシウス監督や、主演のジャン・デュジャルダン、ベレニス・ベジョが膨大なリサーチのうえで撮影に挑んだのを知ったが、その甲斐あって、ハリウッド黄金期の名作や名優を彷彿させるシーンが効果的に登場し、古い映画が好きなわたしにとっては二重に楽しめる作品だった。例えば主人公が衝撃の事実を知るシーンの音楽はアルフレッド・ヒッチコックの『サイコ』だったり、『雨に唄えば』で似たシーンがあったのを思い出して頬がゆるんだり、という具合だ。

ヌーヴェル・バーグの監督たちがアメリカの商業映画監督を再評価したように、こうしてフランス人の監督が、フリッツ・ラングやジョン・フォード、ビリー・ワイルダーといった名匠たちにオマージュを捧げて、いま白黒のサイレント映画を撮ったというのはとても面白い。そして白黒のサイレント映画には、そこにしか存在しないロマンティックやエレガンスが存在することに改めて気づき、完全に魅了されてしまった。

最後に、『人生はビギナーズ』でもジャック・ラッセル・テリアでアーサー役のコズモ君の演技が話題になったけれど、こちらに登場する同じジャック・ラッセル・テリアのアギー君の演技にも驚かされる。オスカーの犬部門があったとしたら、大変な接戦になったのは間違いないでしょう。


Reviewer : ayako nakamura

ABOUT THIS FILM

2012年4月7日(土)シネスイッチ銀座、新宿ピカデリー他全国順次公開
(2011年 / フランス / 101分 / 配給:ギャガ)

監督:ミシェル・アザナヴィシウス / 撮影監督:ギョーム・シフマン / 脚本:ミシェル・アザナヴィシウス / 製作者:トマ・ラングマン

出演:ジャン・デュジャルダン、ベレニス・ベジョ、ジョン・グッドマン、ジェームズ・クロムウェル ほか

TRAILER