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『ドライヴ』DRIVE

懐かしい匂い、映画心をくすぐる高揚感!

寡黙なハリウッドのスタントマンは、夜になると強盗の逃走を請け負う“ドライバー”。孤独に裏社会を生きてきた男が、女に出会い、そして恋に落ちる。しかし、裏社会での争いに巻き込まれていく。フィルム・ノワールの王道をいくようなこの物語の主演を担うふたりは、『ラースと、その彼女』(あのラース!)『ブルーバレンタイン』などでいま大注目のライアン・ゴズリング(同時期に公開されている『スーパー・チューズデー』でも熱演を披露)と、『17歳の肖像』で数多くの賞に輝き、『SHAME』(“ニューヨーク、ニューヨーク”の歌唱シーンは素晴らしかった)での迫真の演技も印象も新しいキャリー・マリガン。

70〜80年代のフィルム・ノワール/クライム・サスペンスのマナーを踏まえつつ、監督の映画へのリスペクトがスクリーンから滲み出ている。犯人の逃亡を手助けするという設定は、1978年のウォルター・ヒル監督作『ザ・ドライバー』だし、寡黙だが爆発寸前の内に秘めた暴力性を抱えたキャラクター設定は『タクシー・ドライバー』のトラヴィスを、“ドライバー”と聞けば『断絶』を思い出す。その他にも数多くのオマージュが散りばめられている。

また使用されている楽曲も現代的な打ち込み系から、しっかりと“80年代”を感じさせるシンセ音を使ったサウンドもある。そして、なんといっても素晴らしいのが『ヤコペッティの残酷大陸』の“Oh My Love”が流れるエレベーター・シーンは圧巻!楽曲の選択もさることながら“ドライバー”の暴発ぶり(ブチ切れ!)には心底ぞくぞくさせられる。これは70〜80年代の映画にはない現代的な暴力の描き方。もちろん、ヴァイオレンスがあるからいいってことではなく、残酷な描写を真正面から映し出すシーンとわざとカメラを外すシーンといった使い分けもニクいし、要所要所で効かせるスローモーション、照明や色彩効果もよく作られていて、次のシーンの到来を予兆させたり、緊迫感を煽ったり、ときに情感たっぷりと見せたりと、要素の掛け合わせが非常に巧い。そしてノワールらしい明暗のコントラストが効いた影の描写。ヴァイオレンス、カーチェイス、ラブストーリーなど、そのどれもが秀逸なゆえに、観ている側とすれば、「もう少し(ひっぱって)」と、どうしても欲張りになってしまうところだけど、そこをいい案配で抑えているところも非常に素晴らしい。そのちょうど良さが、それぞれのシーンをしっかりと際立たせる。だからこそ、音楽を使わずにエンジンの轟音のみの中盤のカーチェイス・シーンもしっかりと記憶に残る。物語後半からの“ドライヴ”感は必ずもってかれてしまうはず。

台詞が少なく寡黙な男を演じるライアン・ゴズリングが二枚目過ぎないところもいいし、常に楊枝を口にくわえている妙なキャラ設定もなんかB級感があっていい。時折見せる笑顔がまたニクい!心理描写を少なくしたことで、孤高感やハードボイルド感も出ている。キャリー・マリガンは、『わたしを離さないで』なんかもよかったけど、揺れ動く心情を笑顔と困り顔の中間のような表情に込めていて、それがなんとも言えない可愛さ(?)を醸している。脇役陣も主演のふたりに劣らず、素晴らしくキャラが立っていて素晴らしい印象を残してくれている。なかでもジャン=ピエール・ジュネ監督の『ロスト・チルドレン』や『エイリアン 4』でもお馴染みのロン・パールマンの悪人顔ったら、たぶん一番インパクトあるかも。

2011年のカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞したことも、方々から聞こえてくる賞賛の声も納得の完成度。映画心をくすぐる逸品。デンマーク出身のニコラス・ウィンディング・レフン監督、要注目です。


Reviewer : yuki takeuchi

ABOUT THIS FILM

2012年3月31日より、新宿バルト9他全国ロードショー

(2011年 / アメリカ / カラー / シネスコ / ドルビーデジタル / 100 分 / 配給:クロックワークス)

監督:ニコラス・ウィンディング・レフン/ 原作:ジェイムズ・サリス(ハヤカワ文庫刊) / 脚本:ホセイン・アミニ / 撮影:ニュートン・トーマス・サイジェル / 編集:マシュー・ニューマン / 音楽:クリフ・マルチネス

出演:ライアン・ゴズリング / キャリー・マリガン / アルバート・ブルックス / ブライアン・クランストン / クリスティナ・ヘンドリックス / ロン・パールマン / オスカー・アイザック

TRAILER