UNZIP

『ヒューゴの不思議な発明』Hugo

“映画の魔法”を体験できる、マーティン・スコセッシの見事なマジック

子どもの頃からファンタジーが大好きだった。ミヒャエル・エンデの「はてしない物語」を読むたび、今度こそファンタージエンに行けるかもとドキドキしていたし、佐藤さとるさんの「コロボックル物語」シリーズ(講談社青い鳥文庫)に夢中になって、いつの日か、すばしっこいコロボックルの友だちが本の影からそっと姿を現した時には絶対に見逃さないと心に決めていた。

残念ながらファンタージエンに行く機会は訪れず、コロボックルの友だちにも出会えないまま大人になった。それでもファンタジー映画にはつい心が踊ってしまう。UNZIPらしくないのを承知で言うと、特にファンタジー大作となると尚更だ。『ヒューゴの不思議な発明』も、密かに、でも真っ先にチェックしていた。

しかし、今回はちょっと事情が違った。あのマーティン・スコセッシ監督の作品だったからだ。スコセッシ監督と言えば、真っ先に思い浮かぶのは『タクシードライバー』などロバート・デ・ニーロ主演作品の数々。ドライな暴力描写の印象が強い。余談だが、もし戦争映画の監督を誰か指名できるとしたら、リストの1番目は絶対にスコセッシ監督だと常々思っている。その彼が、ファンタジー映画を撮ったというのは意外だったし、3Dと知ってさらに驚いた。

舞台は、1930年代のフランス。事故で父を亡くした少年ヒューゴが主人公だ。ヒューゴにとって、ただひとつ、父との繋がりを感じられるものは父と一緒に修理をしていた、とても精巧なつくりの壊れたゼンマイ仕掛けの人形。この人形を修理することだけが、ヒューゴの生き甲斐だった。そんなある日、オモチャ屋の店主に出会い、ヒューゴの運命の歯車は、大きく回り始める。いよいよ冒険の始まりだ。

ファンタジー映画と言っても、この作品には、いわゆる魔法使いが使う魔法や空想の生き物は登場しない。代わりに映画の世界に魔法をかけるのは、“世界初の職業映画監督”と言われ、世界初のSF映画として有名な『月世界旅行』(1902年)を撮ったジョルジュ・メリエスとマーティン・スコセッシの二人の監督。ジョルジュ・メリエスがどんなかたちで登場するのかは映画を観てほしいが、彼のエピソードは、ほとんどが実話だと言う。ヒューゴの冒険にドキドキしながら、ジョルジュ・メリエスの半生を知ることもできるオマケ付きなのだ。そして物語は愛と夢と温もりに溢れて、煌めいている。まさに“映画の魔法”を体験できる映画。これこそが本物のファンタジーではないか。

そのうえ、スコセッシは“偉大な映画の魔術師”ジョルジュ・メリエスの作品をデジタル化して後世に遺すという偉業までやってのけた訳で、この作品自体が、まるでいくつも仕掛けのある見事なマジックのよう。

映画を愛する人と、ものづくりが好きな人に特におすすめしたい、素敵な映画。ぜひ映画館で、3Dで観てください。ディズニーランドのアトラクションに乗っているような気分で本物のファンタジーを体験できる、3D映画の登場です。


Reviewer : ayako nakamura

ABOUT THIS FILM

2012年3月1日より全国ロードショー
(2011年 / アメリカ / 126分 / 配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン)

監督:マーティン・スコセッシ / 脚本:ジョン・ローガン / 原作:ブライアン・セルズニック

出演:エイサ・バターフィールド、クロエ・グレース・モレッツ、サシャ・バロン・コーエン、ベン・キングズレー、ジュード・ロウ、レイ・ウィンストン、クリストファー・リー、ヘレン・マックロリー、リチャード・グリフィス、フランシス・デ・ラ・トゥーア、エミリー・モーティマー、マイケル・スタールバーグ