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『灰とダイヤモンド』POPIOL I DIAMENT

アンジェイ・ワイダの名を世界に知らしめた歴史的傑作

1956年に第二作目にあたる『地下水道』でカンヌ国際映画祭審査員特別賞を受賞した注目を集めいていたアンジェイ・ワイダは、58年にヴェネチア映画祭国際批評家連盟賞を受賞した本作で一躍、世界に知れわたる存在となる。また、同時代のアンジェイ・ムンク(『鉄路の男』)、イエジー・カヴァレロヴィッチ(『尼僧ヨアンナ』『夜行列車』)、カジミェシュ・クッツ(『沈黙の声』)、タデウシュ・コンヴィツキ(『夏の終りの日』)などともに“ポーランド派”と呼ばれ、ポーランド映画が世界に知られるムーブメントの中心的存在でもあった。

本作は、イエジー・アンジェウスキーによる原作をもとに、ドイツによるポーランド占領がまさに終焉を迎えようとしていた第二次世界大戦末期の1945年5月の4日間、反ソ連派のテロリストの青年マチェックを主人公に、街に集まる人びとを通して当時のポーランドの姿を描き出す。マチェクは、アンジェイとともにある人物の暗殺を企てるが別の人物と知ることになる。彼らは街のホテルにバーで、給仕をしているクリスティーナと出会い、マチェクは彼女に惹かれる。終戦を間近にひかえた街と人びとの狂騒と運命に翻弄されるマチェクの姿が、モノクロの美しい映像のなかで描かれていく。

明暗のはっきりとした鮮烈なモノクロの映像、マチェクを演じるズビグニエフ・チブルスキーの歴史的な名演、クリスティーナを演じるエヴァ・クシジェフスカの透明感ある美しさ、そしてワイダ監督による緻密な演出と構成美やシンボリズムともいえる表現は、崩れおちた街並みやマチェクの揺れ動く心模様、人びとによる夜を徹しての狂騒とそれが空けた朝の静けさのなかで、言葉すら失うほど圧倒的ですらあり、芸術的な表現によってポーランドが背負ってきた暗黒ともいえる歴史を鮮やかに浮かび上がらせている。あまりにも有名なラストシーンの残酷さと儚さは、いわずもがな映画史に残るシーンだ。

歴史的な傑作であり、これまでに何度となく語られてきた本作について、あらためて語ることなどなきに等しいかもしれない。しかし、いまだ現役で素晴らしい作品を生み出しつづけるアンジェイ・ワイダ監督の最新作『菖蒲』と本作『灰とダイヤモンド』(や『地下水道』『夜の終りに』)が同時期にスクリーンで観ることができるということの素晴らしさは特筆すべきだろう。また、これらが上映されるポーランド映画祭2012は、前途の“ポーランド派”と呼ばれる監督の作品群も同時に上映され、監督くくりという縦軸だけではなく、時代性という横軸でもアンジェイ・ワイダ作品、ならびにポーランド映画を観ることができる素晴らしい特集上映となっている。


Reviewer : yuki takeuchi

ABOUT THIS FILM

ポーランド映画祭2012
2012年11月24日(土)〜12月7日(金)2週間限定
渋谷シアター・イメージフォーラムにて開催!


『灰とダイヤモンド』
(1958年 / ポーランド / 102分 / 白黒)

監督:アンジェイ・ワイダ、原作:イエジー・アンジェウスキー、アンジェイ・ワイダ

出演:ズビグニエフ・チブルスキー、エヴァ・クジジェフスカ、バクラフ・ザストルジンスキー、アダム・パヴリコフスキー

主催:ポーランド広報文化センター 
共催:マーメイドフィルム/VALERIA/スコピャ・フィルム
協力:フィルムスタジオ・カドル/アダム・ミツキェヴィチ・インスティチュート/東京国立近代美術館フィルムセンター
後援:駐日ポーランド大使館 
配給:マーメイドフィルム 宣伝:VALERIA  配給協力:(社)コミュニティシネマセンター
第25回東京国際映画祭提携企画

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