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『ピラミッド 5000年の嘘』THE REVELATION OF THE PYRAMIDS

これまでの常識が、すべて嘘だったとしたら…? ピラミッドの真実に挑むドキュメンタリー

世紀をまたいで合コンに携わってきた。モテたい。なにがなんでもモテたい。天賦の美貌を授かり損ねた男に生まれた以上、合コンで生きる道は「しゃべり」しかない。でもすべらない話なんかしゃべれない。おいしいイタリアンを知ってるわけでもない。だから私はひたすら陰謀論をしゃべることにしている。

「ONE PIECEは創価学会の広報漫画らしいよ!」「へーそうなんだ!」「俺のこと好き?」「好き!」…そんなミラクルあるわけない。陰謀論で女を抱くという陰謀は、未だかつて成功したことはないが、それでも陰謀論が好きだ。いくら荒唐無稽でも、時に真実が紛れているから目が離せない。

陰謀論のクオリティを図るポイントは3つある。理屈はしっかりしているか、リアリティはあるか、そして、本当だったらいいなあと思えるロマンはあるか。そういった意味で、この映画『ピラミッド 5000年の嘘』にはいきなり1億点を差し上げたい。

「ピラミッドはクフ王の墓じゃないらしいよ!」
映画の出発点は、合コンでしゃべる陰謀論となんら変わらない。が、内容の分析力と説得力は合コンの与太話の比ではない。映画の下地となったピラミッドに関する新説を唱えたのは、数学と建築を専門とするエジプト学者ジャック・グリモー。彼が37年にも渡るピラミッド研究の末にたどり着いた説を、パトリス・プーヤール監督が6年をかけて徹底的に検証し、1本のドキュメンタリーにまとめた。これは大人の本気だ。学者と芸術家の本気が、この映画には詰まっている。

まずこの映画が教えてくれるのは、人類はこの壮大な建造物に関してなーんにも分かっていないということ。クフ王の墓だった!とか、建設期間は20年!とか、世界のエジプト学者たちが挙って前提にしていた「常識」は「仮説」に過ぎなかったのだ。

従来のピラミッドイメージを粉砕したところで、建築・物理・地質・数学・気候学・天文学など、あらゆる分野における一線級の学者たちが次々と登場し、冷徹な科学の視点で新たなピラミッド像を組み立てていく。中でも、ピラミッドに秘められた黄金比や円周率、暦に関する数字が明かされるくだりは、よく出来たミステリー小説を読むように痛快!映画はやがて、モアイ像やナスカの地上絵など、世界に散在する古代遺跡に「ある共通点」を見いだし、スケールのでかい結論に導いていく。

普通なら一笑に付してしまうトンデモ説だが、「もしかしたらマジかも?」と思わせるに十分な理屈と、信じたくなるロマンを兼ね備えている。これぞまさに陰謀論の醍醐味!知的好奇心が性感帯の人は昇天まちがいないだろう。

そしてこの映画が好印象だったのは、エジプト学者の権威を登場させ、新説を真っ向から否定させていることだ。それは監督の誠実さでもあり、古い慣習に捉われた学者たちの悲哀にも受け取れる。この映画がきっかけとなって議論が深まるだろう。「正しく火に油を注ぐ」ことも、映画のひとつの役割である。

そういえば、5年くらい前に付き合っていた彼女が、実はロシア人のハーフだったことを今さら人づてに知らされた。あなたの目の前にある常識は、本当に常識だろうか?


Reviewer : takeshi takemura

ABOUT THIS FILM

2012年2月18日(土)より新宿バルト9、丸の内TOEI他全国ロードショー
(2011年 / フランス / 1時間46分 / 配給:スターサンズ)

監督: パトリス・プーヤール / 脚本: パトリス・プーヤール、ジャック・グリモー / 原作: ジャック・グリモー / 音楽: ジーン・バプティスト・サビアニ

TRAILER