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『ルビー・スパークス』RUBY SPARKS

『リトル・ミス・サンシャイン』の監督が贈るミラクルなラブストーリー

『リトル・ミス・サンシャイン』で世界を魅了した夫婦監督コンビ、ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリスが6年ぶりに、生み出した新作『ルビー・スパークス』。

天才作家としてデビューしたものの、その後10年間新作を書き上げることのできないカルヴィン。愛犬のスコッティとの散歩とセラピストのもとへ通うのが唯一の日課のような毎日。そんななか、夢に出てきた“理想の女の子=ルビー・スパークス”を主人公にようやく小説を書きはじめる。興に乗じて、理想の女の子を思いままにルビーに投影するカルヴィンの前に、ある日突然ルビーが現実としてあらわれる。現実なのか、単なる病気なのか ―。混乱する中でも小説を書き続けると、ますます輝きをますルビー。そして、カルヴィンとの恋がはじまる。

カルヴィンを演じるのは『リトル・ミス・サンンシャイン』で、ニーチェに影響され沈黙し続けたあの長男ドウェイン役のポール・ダノ。そして、ルビー・スパークス役は、実生活でもポール・ダノの恋人であるゾーイ・カザン。彼女は『エデンの東』などを生み出したエリア・カザンの孫娘で、本作では脚本も担当するほどの才能の持ち主。ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス監督が夫婦ならば、主演するふたりもカップルという組み合わせ。

さすが、ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス監督と思わされるような細やかな演出も素晴らしい。ルビー・スパークスが登場し、カルヴィンと生活をはじめると、彼女のカラフルでキュートな衣装とともに画面がカラフルに色づきはじめる。ルビーのカラータイツやワンピース姿、奔放な振る舞いが本当にかわいい。この映画の最大のポイントは、ゾーイ・カザンのまさに“小説から飛び出してきたような”存在感。また、カルヴィンの愛犬スコッティもいい味出しているし、カルヴィンが小説を書くのは、古いタイプライターだというのもとても暗示的でいい。カルヴィンのセラピスト、母親役(アネット・ベニング)やその恋人役(アントニオ・バンデラス)、カルヴィンの才能に嫉妬する作家の嫌な感じなど、あくまでメインはカルヴィンとルビーのふたりだけど周りを固めるキャラクターもとてもキャラがたっている。そして、物語後半のスピード感のある展開も素晴らしい。

そして、ポール・ダノ&ゾーイ・カザンによる息の合った雰囲気は、リアルなカップルで信頼あってこそなのだと思うが、それは観てるこっちが恥ずかしくなるような相思相愛なしあわせな関係のシーンだけではなく、お互いが対立するときの緊迫感にとくに発揮されているようで、真に迫るような迫力すらある。

すごく突飛な物語のようだけれど、きっと誰もがどこかで共感してしまうだろう。なぜなら、誰もが理想と現実の狭間でなにかを抱えたことがあるから。物語に登場する、天才作家としてのカルヴィンに憧れを抱いて寄ってくるファンも、新しい恋人と暮らす奔放な母親にカルヴィンが抱く昔の面影も、パーティーで出会う元恋人との関係も、現実の上に理想や憧れといった淡いフィルターをかぶせている。恋愛だけじゃなくて、どんなときだって仕事や“なりたい自分”や友人関係など、誰もが、自分が思い描く理想と現実のギャップにときには戸惑ったり、ぶつかったりもする。でも、人はそうすることがたんなる幻想なのだと分かっていても、なにかを思い描くことはやめられない。なぜなら、なにかを思い描くことは楽しいことだから。そして人は想像する生き物だから。理想の恋人を思い描くことや物語を生み出すこと、恋人に理想求めてしまう気持ちや自分が思い描くの発明や環境を生み出すこと、それらは多分同じところから生まれてくる。なにか思い描くことが、なにかを生む。でも、それは現実という壁の前で、儚くも脆く砕け散ることもある。みんなそれを知っている。だからこそ素敵でもある。この作品は、なにかを思い描くことと現実に向き合うことの楽しさと苦々しさがロマンティックに、キュートに、そしてしあわせいっぱいに描かれている。


Reviewer : yuki takeuchi

ABOUT THIS FILM

12月15日(土)よりシネクイントほかにてロードショー

監督:ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス
出演:ポール・ダノ
   ゾーイ・カザン


日本語字幕:栗原とみこ
配給:20世紀フォックス映画
2012 年/アメリカ映画/カラー/ビスタ/SR・SRD/104 分

TRAILER