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『SHAME -シェイム-』Shame

イギリスの新鋭S・マックイーン監督作品。新しい才能の強烈なセッションに注目!

世紀の大スターと同姓同名のスティーブ・マックイーン監督作品。実は「あのスティーブ・マックイーンが監督っ?しかもセックス依存症の映画ですって??」…と、うっかり頭の中を“?”でいっぱいにしてしまったのだけど、偉大な俳優スティーブ・マックイーンは、ずいぶん前に亡くなっているのだからそんな筈はなく、“?”だらけの出会いのついでにイギリスの新鋭監督スティーブ・マックイーンの作品を観ることになった。本作は長編映画デビュー作『Hunger』(2008年/日本未公開) に次ぐ長編第二作目だそうで、マイケル・ファスベンダーは二作続けての主演。

映画は、ブルーのシーツの上に放心した男性が横たわるシーンから始まる。どういう状態なのかわからないけど、なぜか目が離せない。そして、どうやら男の日常らしい様子が、ただ描かれ続ける。ほとんど台詞もなく、まるで説明も与えらない。ただ、トイレに行くのと変わらないトーンで、マスターベーションをしたり売春婦を部屋に呼んだり女性を誘惑したりするシーンが描かれ続けるので、この男が“そういう日常”を過ごしている人物なのだとわかる。エロティックなムードは一切なく、妙な緊張と孤独だけが伝わって来る。それなのに画面から目を離すことができない。なんだ、この映画?

やがて妹らしい女性が登場すると、男はあきらかに動揺を見せる。脆く、愛に溺れやすく、腕に無数のリストカットの傷痕。セックス依存症の兄に、恋愛依存症の妹。ふたりとも孤独で、傷ついている。どうやらこの兄妹が隠している“SHAME”は共有のものらしいと感じるが、それは“SHAME”ゆえに、分かち合う類いのものではないようだ。緊張と孤独はどんどん上塗りされて、もはや画面から目を離すことができないどころか、心まで掴まれて苦しいほど。なんなんだ、この映画!

わかりやすい答えを提示してくれない代わりに、感覚的な部分に鋭く切り込んでくる。映像には抗い難い引力があって美しい。マイケル・ファスベンダーと妹役のキャリー・マリガンの演技も素晴らしくて、この強烈なセッションは、例えるならフリー・ジャズのような、とでも言えばいいのかな。いやー、すごい監督が出てきたと思います。

最新作は『Twelve Years a Slave』という作品。ブラッド・ピットが製作・主演、マイケル・ファスベンダーが共演だそう。最も新作を楽しみにする監督のリストに、スティーブ・マックイーン監督が加わりました。


Reviewer : ayako nakamura

ABOUT THIS FILM

2012年3月10日シネクイント、シネマスクエアとうきゅう他全国順次ロードショー
(2011年 / イギリス / 101分 /配給:ギャガ)

監督:スティーブ・マックイーン

出演:マイケル・ファスベンダー、キャリー・マリガン、ジェームズ・バッジ・デール、ニコール・ベハーリーほか