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『サイド・バイ・サイド:フィルムからデジタルシネマへ』SIDE BY SIDE - THE SCIENCE, ART, AND IMPACT OF DIGITAL CINEMA -

映画の未来を見据えるドキュメンタリー

いま、映画は大きな過渡期の最中にある。映画誕生から約100年、いままでメインストリームであった(銀塩)フィルムは、過去20年にわたって、数々の創造力をカタチにするための技術的な発展、そして製作の現場のニーズに合わせ台頭してきた<デジタル>という大きな波にその場を奪われつつある。わたしたち一般的な観客からは、あまり見えてこないような現場サイドのここ20年間のフィルムからデジタルへの変遷、現場の声、そして<デジタル化>によって生まれる映画の消費され方の変化といった、スクリーンの向こう側を、自身も監督や製作に関わるキアヌ・リーブスがナビゲートする。

キアヌのインタビューに答える監督たちは、マーティン・スコセッシ、ジョージ・ルーカス、ジェームズ・キャメロン、デヴィッド・フィンチャー、クリストファー・ノーラン、スティーヴン・ソダーバーグ、ロバード・ロドリゲス、ラース・フォン・トリアーなど。いち早くデジタル映像に取り組んでいたジョージ・ルーカス。それに対してデジタルを好意的には受けとめていないクリストファー・ノーランは『ダークナイト』シリーズでもフィルムで撮影を行った。スティーブン・ソダーバーグは革新的なデジタル・カメラ“RED”を使用し『チェ』の撮影に挑み、大御所マーティン・スコセッシは軽やかな身のこなしによって3D作品『ヒューゴの不思議な冒険』を生んだ。キアヌでなければ出来なかったであろう、あまりにも豪華な顔ぶれが、フィルム〜デジタルについての意見、そして自身の製作経験を仔細に語る。また、ここ20年の変遷を目の当たりにしてきた撮影監督、編集者、カラリスト(仕上げ段階での色調整担当する)、VFX技術者、そして機材メーカーなど、業界そのものを支えてきた彼らの言葉は、さらに真に迫る。

豪華な監督たちの言葉を聞けるだけでも素晴らしいのだが、いままでわたしたちが観てきた映画が、監督のどのような意図をもち、どのような機材を使用して製作され、そしてフィルム〜デジタルの流れのなかで、どのような位置にあるのかといった、発見の連続だ。映画を観ることだけでなく、技術的な好奇心すら満たしてくれる。観ている間、始終わくわくさせられるが、実はこのフィルム〜デジタルの流れは、いまわたしたちが目の当たりにしている劇場の衰退、映画の楽しみ方の変化、また製作することの敷居の変化にも通じていることを知ることが出来るだろう。

ここではほとんど語られないが、高画質な動画撮影も可能なデジタル一眼レフカメラとして圧倒的な支持を獲得したキャノン EOS 5D MarkII(以前に紹介した『わたしたちの宣戦布告』『アリラン』『果てなき路』はEOS 5D MarkII、『生きてるものはいないのか』はEOS 7Dで撮影されている) や、現在アクションカメラとして広く使用されている GoPro の爆発的な普及、その利便性と機能は“観たことのないような映像”を生み出しているし、一般の人々でも使えるような価格で販売されている。このような機材はさらに増え、大きな変化を広い範囲にもたらすだろう。

デジタル一眼レフカメラの普及によって、銀塩フィルムが壊滅的な衰退をみせたように、また、3Dプリンターの登場が新たな産業革命に大きな変化をもたらすと言われているように(『MAKERS―21世紀の産業革命が始まる』)、人間の進歩する創造力と技術が映画界だけじゃなく大きな枠で世界を変える。そのときに、劇中に登場するデヴィッド・リンチやミヒャエル・バルハウスの言葉は真理としてとても強く響いているのかもしれない。

すべての映画好きの人々に観てもらいたいドキュメンタリーだ。


Reviewer : yuki takeuchi

ABOUT THIS FILM

12月22日(土)より、新宿シネマカリテ、渋谷アップリンク、横浜シネマ・ジャック&ベティ他、全国順次公開
(2012年 / アメリカ / 99分 / HD / 16:9 / 5.1ch)

監督:クリス・ケニーリー、プロデューサー:キアヌ・リーブス、ジャスティン・スラザ

出演:キアヌ・リーブス、マーティン・スコセッシ、ジョージ・ルーカス、ジェームズ・キャメロン、
デヴィッド・フィンチャー、デヴィッド・リンチ、クリストファー・ノーラン、スティーヴン・ソダーバーグ、ラナ&アンディ・ウォシャウスキー、ラース・フォン・トリアー、ダニー・ボイル、ウォルター・マーチ、ヴィットリオ・ストラーロ、レナ・ダナムほか

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