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『スーパー・チューズデー ~正義を売った日~』THE IDES OF MARCH

ジョージ・クルーニー監督が描く大統領選の舞台裏

『ER緊急救命室』のハンサムな小児科医役でハリウッドいちモテる男となり、ゴシップ誌を賑わせたジョージ・クルーニーは、いまや「もっともアメリカ大統領になってほしい俳優」と言われるハリウッドいちデキる男。

ニュースキャスターだった父の影響で人道的活動にも熱心に取り組んでいて、国連平和大使にも任命されている。つい先日、スーダンの人権問題についてスーダン大使館前で抗議活動をして逮捕された様子が報道されたが、拘束される姿も格好いいと評判になり、自身の逮捕によってこの問題に注目を集めることに成功するという、図ったようなデキ具合。

そんなデキる男、ジョージ・クルーニーの監督第4作目が『スーパー・チューズデー ~正義を売った日~』。アメリカ大統領選挙の舞台裏を描いた政治サスペンスドラマだ。勝つために手段を選ばない大統領選の中で繰り広げられる駆け引きの連続。そして妥協の末に“正義”すら取引されてしまう現実が描かれる。

クルーニー監督作品を観て思うのは、映画のことを本当によくわかっている人が丁寧に作り込んだ作品だなということ。真実の報道のためにマッカーシズムに立ち向かうジャーナリストを描いた『グッドナイト&グッドラック』にも共通するが、静かで品のいい演出なのに重みがある。それでいて一見難しそうなテーマの作品を一般の人がエンタテインメントとして楽しめるまでに仕上げている点は実に見事。いい意味で、古き良きハリウッドの名作を観ているような安定感がある。

キャストには主人公のライアン・ゴズリングをはじめ、魅力ある俳優が揃っているが、中でも選挙キャンペーン・マネージャー役のフィリップ・シーモア・ホフマンと、ジョージ・クルーニーがとてもいい。クルーニーは、主人公が心酔する民主党の大統領候補を演じている。前半の清廉潔白でカリスマ性溢れる政治家の演技も説得力があって素晴らしいが、“理想の大統領”に見えた男の実の姿を知るほどに、この役に自身をキャスティングしたクルーニーのクレバーさを賞賛したくなった。俳優が監督業を兼ね、自身の監督作品に出演することは珍しくないが、俳優としてのエゴが勝ってしまったと見える残念なケースもある。クルーニーは「他の誰もやりたがらなかったから僕が演じた」と言っているが、なにしろデキる男、それだけではないだろう。俳優ジョージ・クルーニーも使いこなしたクルーニー監督の采配に完敗です。


Reviewer : ayako nakamura

ABOUT THIS FILM

2012年3月31日(土)丸の内ピカデリー他にて全国ロードショー
(2011年 / アメリカ映画 / 101分 / 配給:松竹)

監督:ジョージ・クルーニー / 脚本:ジョージ・クルーニー、グラント・ヘスロヴ、ボー・ウィリモン / 原作:ボー・ウィリモン「ファラガット・ノース」

出演:ライアン・ゴズリング、ジョージ・クルーニー、フィリップ・シーモア・ホフマン、ポール・ジアマッティ、マリサ・トメイ、ジェフリー・ライト、エヴァン・レイチェルウッド