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『断絶』TWO-LANE BLACK-TOP

いまなお輝く伝説のロードムービー

『イージー・ライダー』(’69)や『バニシング・ポイント』(’71)が登場しアメリカ映画が大きな変化をむかえた70年代に誕生し、いまなお傑作と語り続けられるモンテ・ヘルマン監督による『断絶』。公開当時、興行的には惨敗したといわれるが、作品としての素晴らしさはときを経るにしたがって増すばかりだ。DVDは何度もリリースされ、世界でレトロスペクティヴやリバイバル上映がされている。

登場人物たちに具体的な名前はなく、それぞれ《ドライバー》、《メカニック》、《ガール》、そして《GTO》と示されているだけだ。夜のストリートレースで賭け金を稼ぐ若者、ドライバー(ジェームス・テイラー)とメカニック(デニス・ウィルソン)は、55年型シェビーに乗りLAを出て南東へ向かう。途中、乗り込んできた少女(ローリー・バード)を後部座席に座らせ、車を走らせ続けるが、途中で出会ったポンティアックGTOを運転する中年の男(ウォーレン・オーツ)と、各々の車を賭けワシントンD.C.を目指すレースを行うことになり、大陸横断の長旅に出る。

轟音とともにフリーウェイを疾走する2台の車、車窓の外を流れるアメリカの荒野、ストリートレース、ヒッチハイク、ファッションといった70年代当時のアメリカを体現する様々なアイコンと愛を求め彷徨う若者たち。名前を持たないという無名性が、誰でもあり同時に誰でもないという当時の若者の存在の寄る辺のなさを表わし、そして、終わりがないかのごとくどこまでも続くフリーウェイを走り続ける彼らは、永遠でもあるようでいて、またどこにも行けない存在でもあるようだ。2台の車に乗る男たちの対立やそれぞれの男たちの生き方、その間で揺れ動くガールの存在を軸に説明的な描写を排し、シンプルにテンポよくつながれた映像がまさにロードムービーたるべき疾走感を、実際に大陸を移動ながら撮影された数々シーンはドキュメンタリー的な臨場感も生み出している。

『断絶』は数多くのフォロワーを生み出してきた。クエンティン・タランティーノ『レザボア・ドッグス』、ヴィンセント・ギャロ『バッファロー ‘66』は当初モンテ・ヘルマンに監督してもらうために企画されたものだったと言われ、またガス・ヴァン・サントの『ジェリー』やソフィア・コッポラの『SOMEWHERE』などにもその影響を見ることが出来る。この作品が残した影響は、映画だけでなく様々なシーンで引き継がれている。これまで何度となく繰り返し観られ、語られてきたこの作品がこれほどにまで愛されつづける理由は、ロードムービーの金字塔だというだけでなく、70年代を代表するシンガー、ジェームス・テイラーとザ・ビーチ・ボーイズのデニス・ウィルソン、サム・ペキンパー作品などに出演していた名優ウォーレン・オーツといった素晴らしい出演陣に加え、様々な映画的フェティッシュをくすぐる要素を抱えているからだろう。そして、本作が失われた“アメリカ映画”を体現しているからに違いない。


Reviewer : yuki takeuchi

ABOUT THIS FILM

『断絶』ニュープリント版
2012年1月14日 (土) より、渋谷シアター・イメージフォーラムにてモーニング&レイトショー公開
(971年 / アメリカ映画 / カラー / 102分 / シネマスコープ / 35mm)

監督:モンテ・ヘルマン / 脚本:ウィル・コリー、ルドルフ・ワーリッツァー / 製作:マイケル・S・ローリン / 撮影:ジャック・ディアソン / 音楽:ビリー・ジェイムズ / 編集:モンテ・ヘルマン

出演:ジェームス・テイラー、デニス・ウィルソン、ローリー・バード、ウォーレン・オーツ、ハリー・ディーン・スタントン

TRAILER