UNZIP

『コックファイター』COCKFIGHTER

ウォーレン・オーツ、ロジャー・コーマン、モンテ・ヘルマンによる幻の作品!

『果てなき路』で21年ぶりに復活をとげたモンテ・ヘルマン監督の幻の、そして呪われた逸品『コックファイター』が製作から39年、ニュープリントで遂に日本初公開される。

B級の帝王ロジャー・コーマン製作、ウォーレン・オーツ主演でありながら74年の公開時に興行的に惨敗した本作。同じく製作を担ったモンテ・ヘルマンの前作『断絶』(71年)に引き続きの惨敗に、ロジャー・コーマンは躍起になり、当時、別作品のシーンを本作に挿入し、タイトルやポスター・イメージまで変更したというエピソードすら語り継がれる。もちろん、モンテ・ヘルマン監督と間に確執を生んだという、いわくつき。

ロジャー・コーマンがヒットを確信して、意気揚々と取り組んだテーマが「闘鶏」だったのだから、興行的な惨敗も頷ける。テーマが斬新すぎる。ロジャー・コーマンが公開後に気づいたように、誰が闘鶏になど興味を持つというのか…。しかも、はっきり言って全編とおして観ても、闘鶏の面白さは、まるきし伝わってこない。過去に闘鶏で失敗をし、口をきかないという誓いをたてた主人公フランクが再起をはかるという物語にもたいした起伏があるわけでもない。しかし! 長らくファンの間で伝説として語り継がれるように、この作品は多大な映画的な魅力に満ちている。

まず、言わずもがな、それはウォーレン・オーツの魅力だ。その存在感! ときに残酷な、ときに滑稽なもの言わぬ主人公フランクのふるまいとニヒルな表情。そしてスーツにカウボーイハットといういで立ちは、あまりにも渋すぎる! 悪役も含め、さまざまな魅力的な役柄を演じてきたなかで『ガルシアの首』のベニー役にも引けをとらないとほどの存在感。

闘鶏や鶏を扱うシーンの(動物愛護的にはちょっと…というような)残酷な描写、土臭さや男臭さ、その男にしか分からない美学につらぬかれた断絶感や唐突な行為(ときに暴力的な)、そしてときに滑稽ですらある哀愁は、B級好きにはたまらないテイストだろう。また、モンテ・ヘルマンらしい説明的なシーンを排したドライな演出も気持ちいい。そして、ラストにフランクがみせる凄絶な愛の表現とそれを受けるエリザベスの対応は、映画史においても、ここにしか存在し得ないあまりにも衝撃的なシーンだ。フランクの表情が忘れられない、あれはあまりも凄すぎる…。

まだ、注目すべき点はある。撮影はなんとネストール・アルメンドロスなのだ。ロメールやトリュフォーなどのもとでキャリアを踏み出し、やがて『天国の日々』(78年、テレンス・マリック監督)、『クレイマー・クレイマー』(79年)で2度のアカデミー賞撮影賞に輝いた名カメラマン。自然光で撮られる美しい映像美を代表とする、その特徴的な手腕はここでも発揮されている。冒頭タイトルバックの流れる車窓からシークエンスや闘鶏シーンなど、惹きつけれられる数々の場面がある。また、音楽はマイケル・フランクで、その特徴的なAORとはまた違った味わいを聴かせてくれる。内容があまりにも斬新すぎて受け入れられなかったのに作りは抜群という、ねじれ感に愛着すら覚えてしまう。これぞアメリカ映画の闇。

物語のなかで、ウォーレン・オーツことフランクは、愛するエリザベスにこう手紙を書く。「一度でいいから闘鶏を見に来てくれないか」。そう、とにかく一度観て欲しい。『コックファイター』を観たときに、フランクになるか、エリザベスになるか…。そこには、本作を受け入れられるか、そうでないかの大きな隔たりがある。もし、あなたがフランクであるとき、この作品はあまりも深い印象を残してくれるはず。


Reviewer : yuki takeuchi

ABOUT THIS FILM

映画「コックファイター」ニュープリント版

2013年1月19日(土)より、
4週間限定渋谷シアター・イメージフォーラムにて公開!後、全国順次公開

監督:モンテ・ヘルマン / 製作:ロジャー・コーマン / 原作・脚本:チャールズ・ウィルフォード / 撮影:ネストール・アルメンドロス / 編集:ルイス・ティーグ / 音楽:マイケル・フランクス

出演:ウォーレン・オーツ、ハリー・ディーン・スタントン、ローリー・バード、トロイ・ドナヒュー、リチャード・ B・シュル、エド・ベグリー・Jr、スティーヴ・レイルズバック/スチル:ローリー・バード

1974 年/アメリカ映画/原題:COCKFIGHTER / 84 分/ヴィスタサイズ/ 35mm /カラー

TRAILER