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『カラカラ』karakara

出会い、見つけ、感じるロードムービー

京都を舞台に若い女性のリアルと描いた『Keiko』(79)でセンセーショナルなデビューを飾って以来、『ケニー』の世界的な大ヒットを経て、カナダと日本を舞台に意欲作を発表し続けるクロード・ガニオン監督の最新作『カラカラ』は、大人のための小さなロードムービーだ。

カナダから念願の沖縄を訪れた元大学教授ピエール(ガブリエル・アルカン)は、あるとき沖縄に在住の主婦・純子(工藤夕貴)と出会う。しかし後日、ピエールのもとへ純子が夫の暴力から逃げてきたことをきっかけに二人の関係は急に縮っていく。思いがけない旅の道連れを得たピエールだが、それはけっして喜ばしいことだけではなかった。生まれた国も育った文化も沖縄にいる理由も違う二人は様々なギャップを抱え、そして衝突する。しかし、沖縄の自然や人びと、文化と出会うなかで、ふたりはそれぞれに新しい人生の道筋を見つけはじめる。

クロード・ガニオン監督自身がここ数年、沖縄に住み、あたためてきたという本作には、監督のさまざまな思いが込められている。異邦人としてのピエールの行動や異国の文化に対する感じ方、彼と純子のやりとりのなかにも、それはある。沖縄だからといって華やかリゾートといった風景は登場せず主人公のふたりが足を運ぶのは、監督が自身の目で探してきた静かで本当の沖縄の美しい姿が垣間見えるような場所だ。沖縄が抱える社会問題や人が老いていくという普遍的なテーマ、自然や人や文化に向き合う大切さなどへの思いも、そこかしこに感じることができる。タイトルにもなっている泡盛を入れる器・カラカラや芭蕉布と呼ばれる沖縄の伝統的な織物、それ現代に伝える第一人者・平良敏子さんなどもなにかを語りかけてくるだろう。新良幸人による音楽は、物語が進むにしたがって美しい旋律をかたちづくり、終盤でピエールの内省する気持ち、沖縄の空気や文化、景色、自然音たちと見事な調和をみせる。

ここで、それらがどんなメッセージなのか、この映画がどういうものなのかといったことを、あれこれ解説するは野暮に思えてしまう。なぜなら物語に散りばめられているそれらから、何を受け取りどう紡ぐかを、監督は観客を信頼したうえで託しているから。監督自身が映画のなかに明確なメッセージを持たせたくはないと語るように、けっして押し付けがましいものはなく、それらは物語のなかに芽吹いているような存在感でしかない。すべてを掬いあげる必要はないし、自由に感じればいい。ピエールや純子と同じように、観客は出会い、見つけ、感じていく作業を物語のなかで行い104分間の小さな旅を体験する。


Reviewer : yuki takeuchi

ABOUT THIS FILM

1月19日(土)より新宿ピカデリーほか全国順次ロードショー!

監督・脚本:クロード・ガニオン
出演:ガブリエル・アルカン、工藤夕貴、富田めぐみ、あったゆういち
製作:『カラカラ』製作委員会
配給:ククルビジョン、ビターズ・エンド
日本・カナダ合作/104分

TRAILER