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『君と歩く世界』RUST AND BONE

本当に力強く美しい物語

どんな過酷な状況でも必ず光は訪れる、という普遍的であるテーマは、これまでにも何度となくいろいろなカタチで語られてきた。しかし、そうであるがゆえに、よくあるような、もしくは容易に想像できるような、似たような物語が数多溢れ、結果的に浅薄な物語にだったなんてことは多い。

この『君と歩く世界』は、こういうあらすじだ。陽光が輝き、蒼い海が広がる南フランスの観光地。シャチの調教師をしているステファニーを突然事故が襲う。この事故によって彼女の両足は奪われ、彼女の人生は一変する。同じ街にやって来た5歳の子供をもつシングルファーザーのアリ。腕っぷしだけが取り柄の彼は、堅気の仕事ではないがなんとか実直に暮らしていこうとしている。二人はあることがきっかけで出会う、お互いを認め合い、そして再生へ進む。

こう読むと、ありきたりなストーリーを膨らませてしまいがちだが、ジャック・オディアール監督はそういったありきたりな道のりを回避して、ステファニーとアリを誰も想像してなかったような道のりで、光の訪れへと導く。作品のタイトルや南仏の輝かしい陽光、シャチの調教師、シングルファーザーといった要素が、わたしたちに連想させる“きれいな”物語は、いい意味で裏切られる。はじめは圧倒されるだろう。なぜなら、ここには消極的ではないカタチで暴力(こぶしによる力)と性が描かれているからだ。しかし、いつしかこの物語がきれいごとやモラルで描かれているのではないと気づいたとき、この物語が彼らのような人間でしか描くことができない世界をめざしているのだと、胸を打つはずだ。だからこそ、物語のなかに“生”が息づいている。ステファニーの一歩が、アリが振るうこぶしが、そしてふたりの結びつきが、小さな歯車となって彼らが自らの人生を打開していく。この作品の原題である“RUST AND BONE”がとても示唆的だ。そして、物語のなかで煌めく海と空のように様々な要素が激しく、そして美しくコントラストを発している。

ジャック・オディアール作品に出演する俳優はいつも素晴らしい。『真夜中のピアニスト』のロマン・デュリスはもちろん、『預言者』のタハール・ラヒムは本格的な俳優デビュー作でフランス中の注目を集める存在となった。そして、本作のマリオン・コティヤールはいままで数々の作品で名演を披露し、オスカーにも2度輝いている名女優であるが、いままでに観たことのないような役柄を見事に演じ、マティアス・スーナーツとの共演によってさらに深みを増している。

単なる過酷な状況からの再生の物語ではない。本当に力強い生きた作品だ。


Reviewer : yuki takeuchi

ABOUT THIS FILM

4月6日(土)新宿ピカデリー他 全国ロードショー

監督・脚本:ジャック・オディアール
出演:マリオン・コティヤール/マティアス・スーナーツ
原作:「君と歩く世界」(集英社文庫)
後援:フランス大使館  協力:ユニフランス
R-15

劇中歌:ボン・イヴェール 「The Wolves (Act I and II)」/「Wash」第54回グラミー賞最優秀新人賞受賞
2012年/フランス・ベルギー合作/カラー/英題「RUST AND BONE」

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配給:ブロードメディア・スタジオ

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