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『わたしはロランス』Laurence Anyways

注目の新鋭監督、グザヴィエ・ドランによる壮大で美しいラブ・ストーリー

弱冠24歳にして、ガス・ヴァン・サント監督に「大ファンだ」と言わせているカナダの新鋭監督、グザヴィエ・ドラン。この『わたしはロランス』が日本では初の劇場公開作品となる。

幸せな恋人同士だったロランスとフレッド。35歳の誕生日を迎え、ロランスはフレッドに「僕は女になりたい」と告白する。衝撃を受け「これまで築いてきたものは何だったのか」と激しく批判するフレッド。それでも、ふたりが深く愛し合っていることに変わりはなかった。彼への愛ゆえに、フレッドはロランスの最大の理解者として一緒に生きていこうと決める。

自分に嘘をつくことをやめたロランスは、偏見に傷つきながらも、自由を取り戻し、本来の自分を輝かしく生き始める。一方でフレッドは、好奇の目に晒され続けるストレスに加え、自分自身をロランスの添え物のように感じ始める。やがて鬱状態に陥ったフレッドはついにロランスの元を去り、別の男性との結婚を選ぶのだった。しかし、それでもふたりの愛は消えなかった。本作は、10年にもわたる、ふたりの美しく切ない愛の物語だ。

ロランスを演じるのは、フランソワ・オゾン監督の『ぼくを葬る』で死と向き合う主人公を演じたメルヴィル・プポー。女装するようになってからも、以前と変わらない優しさでフレッドを愛する姿はとても自然で、彼に偏見を持ついわゆる“普通”の人たちこそ狂気に囚われているのではないか?…と疑問が芽生え、「自分自身を自由に生きること」そして「人を愛すること」「愛する人のあるがままを受け入れること」について深く考えさせられた。

2009年のデビュー作、『マイ・マザー』の劇場公開(11月9日)も決定し、これからますます注目されそうなグザヴィエ・ドラン監督。どうか、この作品を見逃さないでほしいと思う。


Reviewer : ayako nakamura

ABOUT THIS FILM

2013年9月7日、新宿シネマカリテほかにて公開

監督:グザヴィエ・ドラン
出演:メルヴィル・プポー、スザンヌ・クレマン、ナタリー・バイ

( 2012年/168分/カナダ=フランス/配給:アップリンク )

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