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『ムード・インディゴ うたかたの日々』L'ecume des jours

ミシェル・ゴンドリー監督がボリス・ヴィアンの「うたかたの日々」を映画化

肺の中に睡蓮の花が咲くという奇病にかかってしまったクロエと、愛で彼女を救おうとするコランのラブストーリー ……なんとミシェル・ゴンドリー監督にぴったりな作品だろう。

原作の「うたかたの日々(「日々の泡」とも訳されている)」は、1946年に発表されたボリス・ヴィアンの代表作で、フランスでは“永遠の青春小説”として読み継がれている。日本では岡崎京子が漫画化して1994年から「CUTiE」で連載していたので、フランスの文学に興味がなくてもタイトルに聞き覚えがある人は少なくないのではないだろうか。

美しく詩的でユーモラスな映像世界は、原作小説の描写を忠実に再現したものだが、ミシェル・ゴンドリー監督のリアル過ぎない手作り感のある視覚効果が、すこしの“行間”を残してくれている。想像の世界を視覚化しながら、観客のイマジネーションを奪わない。どこかジョルジュ・メリエスの『メリエスの素晴らしき映画魔術』を思い出すような“映画の魔法”を感じることができる作品だ。

浮き足立つ恋の始まりから、幸せいっぱいの毎日へ。ところが不思議な病をきっかけに、彼らの世界が陰りはじめる。追いつめられたコランは、暗がりの中で愛だけを頼りに、もがき苦しむ。この前半と後半のコントラストがとても素晴らしい。悲劇的な暗がりの中でも明るさを失わず、思いやりに溢れたクロエの美しさは、このコントラストによってますます際立ち、輝きを放っていた。

原作を大切にしたミシェル・ゴンドリー監督だが、タイトルを『ムード・インディゴ』と変えたことにはこだわりがあったそうだ。「ムード・インディゴ」はジャズの巨匠デューク・エリントンの代表曲のひとつ。映画はコランのこんな言葉で始まる。

「人生で大切なのは二つだけ。きれいな女の子との恋愛と、ニューオーリンズかデューク・エリントンの音楽。そのほかは消えていい、醜いのだから」


Reviewer : ayako nakamura

ABOUT THIS FILM

2013年10月5日より新宿バルト9・シネマライズほかでロードショー

監督:ミシェル・ゴンドリー
原作:ボリス・ヴィアン
出演:ロマン・デュリス、オドレイ・トトゥ、ガド・エルマレ、オマール・シー ほか

(2013年 / フランス / 95分 / 配給:ファントム・フィルム)

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