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『ムーンライズ・キングダム』Moonrise KIngdom

いままでで最高のブルース・ウィルスに出会える、最高にチャーミングな映画

ウェス・アンダーソン監督の最新作『ムーンライズ・キングダム』は、1965年を舞台にしたウェス・アンダーソン版『小さな恋のメロディ』とも言えそうな作品だ。小さな島に暮らす12歳のサムとスージーが恋に落ち、秘密の場所“ムーンライズ・キングダム”を目指して駆け落ちする。ふたりの逃避行は、周りの仲間や大人たちを巻き込んで大事件に発展…というお話。

ウェス・アンダーソン監督らしい、オフビートな群像劇であることに変わりはないのだが、今回は俳優陣が豪華。島にただひとりの警察官役に、何度も世界を救う男、ブルース・ウィルス。中年男性のペーソスを漂わせた絶妙の演技は、『ダイ・ハード』のイメージが吹っ飛んで、その佇まいだけで愛おしく思えるほど素晴らしく、ブルース・ウィルスってこんなにいい俳優だったのか!…と気付かせてくれる。サムが所属するボーイスカウトの隊長に、エドワード・ノートン。真面目でちょっと間の抜けたキャラクターも、またいい塩梅だ。

もちろんウェス・アンダーソン作品の常連ビル・マーレイは今回も出演しているし、『天才マックスの世界』のジェイソン・シュワルツマンが思いがけない役柄で登場したり、といった楽しみもある。

ちょっとダメないい人揃いの大人たちと、心の奥に悩みを隠し持ちながらも真っすぐに突き進む子供たち。彼らの織りなすシンフォニーに、夢と冒険、愛、友情、正義といった映画を魔法にかける要素が揃って、ワクワクする楽しさと、じんわりと心に沁みる感動の詰まった、最高にチャーミングな映画。観終わったあと「完璧だなぁ…」と呟いてしまいました。


Reviewer : ayako nakamura

ABOUT THIS FILM

2013年2月8日(金)よりTOHOシネマズシャンテ、新宿バルト9、シネマライズほかにて全国公開
(2012年/アメリカ/94分/配給:ファントム・フィルム)

監督:ウェス・アンダーソン
脚本:ウェス・アンダーソン、ロマン・コッポラ
製作:ウェス・アンダーソン、スコット・ルーディン、スティーヴン・レイルズ、ジェレミー・ドーソン
製作総指揮:サム・ホフマン、マーク・ロイバル
撮影:ロバート・イェーマン
音楽:アレクサンドル・デスプラ
出演:ブルース・ウィリス、エドワード・ノートン、ビル・マーレイ、フランシス・マクドーマンド、ティルダ・スウィントン、ジェイソン・シュワルツマン、ボブ・バラバン、ジャレッド・ギルマン、カーラ・ヘイワード ほか

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