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『マイ・マザー』I Killed My Mother

若き天才、グザヴィエ・ドランのデビュー作。ついに日本公開

長編映画3作目の『わたしはロランス』が日本でも上映され、注目を集めている、カナダの若き才能(なんとまだ24歳!)グザヴィエ・ドラン監督。彼の2009年のデビュー作『マイ・マザー』が『わたしはロランス』に続いて公開された。

本作はグザヴィエ・ドランが19歳の時の作品で、監督・脚本・主演を務めている。半自伝的な内容だと言うが、大人になる過程で感じる、親や大人たちへの苛立ち、親子間の衝突といった、ほとんど誰もが多かれ少なかれ体験しただろう当たり前の葛藤を、鋭く切り取り瑞々しく描いたことに、まずは拍手を贈りたい。

小さな子供の頃、親は絶対の存在であったし無条件に求める存在だった。だが成長する過程で、ある時、親も完璧な人間ではなく、弱さも持ったひとりの人間なのだと気付く。この時ようやく、親子は人間同士として尊重し合う、新たな関係へシフトし始めるのではないかと思う。

だがその過程では、「子供をコントロールしようとする親」への抵抗、常識や既成概念への抵抗、完璧だと思っていた親の欠点に対する苛立ち、といった感情を覚え、自責の念にかられたり、戸惑ったりといった葛藤を多くの人が経験しているのではないだろうか。

グザヴィエは、その葛藤を痛いほどあけすけに、スクリーンを通して見せてくれる。彼に共感し、グザヴィエの葛藤を追体験するうちに、長い間忘れられ、小さなしこりとなって残っていた自分自身の心の痛みまでもが癒されていくように感じられた。

原題は「I Killed My Mother」。僕は母を殺した…なんて、穏やかではないが、人生の通過点で「子供目線で母を見ていた時代」に終わりを告げ、新たな関係へ向かったいうポジティブな変化を象徴しているのだろう。


Reviewer : ayako nakamura

ABOUT THIS FILM

2013年11月9日(土)より渋谷アップリンク他、全国順次ロードショー

監督・脚本・主演:グザヴィエ・ドラン
出演:アンヌ・ドルヴァル、スザンヌ・クレマン、フランソワ・アルノー ほか

(2009年/カナダ/100分/配給:ピクチャーズデプト)

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