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『オン・ザ・ロード』ON THE ROAD

ジャック・ケルアックの不朽の小説が遂に映画化!

1950年代半ばから約10年間、アメリカで吹き荒れ、のちのヒッピーやカウンターカルチャー、あらゆるアートや音楽などに多大な影響を与えたビートニク(ビート・ジェネレーション)。その流れを代表するのがジャック・ケルアックが57年に出版した「路上」だ(現在では「オン・ザ・ロード」として出版されている)。ケルアック自身がアメリカ全土やメキシコを放浪した実体験を、のちに3週間で書き上げたものだが、セックスとドラッグとジャズにまみれたその過激な内容に、編集者は実名では訴えられてしまうと危惧し、登場人物たちの名前、設定を書き直させて出版した。それでも、この小説は数多くのミュージシャンやアーティストに影響を与え、世界中の若者たちのバイブルともなった。

本作の製作総指揮である、巨匠フランシス・F・コッポラも魅了されたその1人だ。自らの手で映画化の権利を獲得していたが、長年それは実現されることがなかった。もうずいぶんと昔から「路上」が映画化されるという噂は、私たちを期待させ続けていた。そして、ついに『モーターサイクル・ダイアリーズ』のウォルター・サレス監督へのオファーによって『オン・ザ・ロード』が完成したのだ。砂埃が舞う乾いた大地と青く広大な空、どこまでも続く路、そして男たちの怠惰で美しい物語は、ウォルター・サレス監督がまさに得意とするような題材だ。期待を裏切らない作品になった。

もちろん、原作を読んだことのある方なら分かるように、どちからとストーリーらしいものはあまりない。駆け出しの小説家サルが、破天荒なディーンと出会い、ともにアメリカ大陸を横断する旅に出る。サルは自分と真逆なディーンとその妻に惹かれながらも、反発もし、また旅のなかで同じくビートニクを代表するウィリアム・S・バロウズやアレン・ギンズバーグなどと出会う。彼らもそれぞれ名を変えて登場する。広大なアメリカ大陸を駆け抜けながら、酒、セックス、ドラッグ、そしてジャズに明け暮れる放浪の日々。人によっては「くだらない、退屈だ」と映るかもしれない。それもありだと思う。

しかし、ここには熱がある。誰もが一度は路上に立ち尽くし、どこまでもつづくその先を見据えたり、移動していないと死んでしまう生き物のように、どこまでもつづく路上を歩き続けたことがあるはずだ。しかし、いつか醒めてしまうのか、どこか置き忘れてきてしまうのか、その瞬間にあった孤独、仲間、恋愛や自由などのあらゆる熱情は、どこかへ去っていってしまう。ふとした瞬間、路から一歩脇に逸れて、どこかに腰を据えるときがやってくる。それは比喩であってもいい。だれもが感じたことあるような熱情とそれが醒める瞬間、その記憶。「路上」には永遠に醒めることのない熱が閉じ込められている。なにかを渇望していたころの記録を自分の中に蘇らせてくれるような。この映画『オン・ザ・ロード』もそうだ。

一度でも原作やビートニクに魅了された人には堪らないだろう。サルが旅路の果てに、彼らが愛したチャーリー・パーカーやディジー・ガレスピーのビバップのように、旅の記憶を高速で絶え間なくタイプライターで刻み続けるシーンがある。紙をセットする手間を省くために、端をつなぎ合わせて長い長い1枚になった用紙に、改行なしでキーを叩き続ける。原作が生み出されたときのあまりにも有名なこのエピソードが、ついに映像となった(ちなみにそれはスクロール版として読むことができる)。ついに映像で観ることができたと胸が熱くなった。


Reviewer : yuki takeuchi

ABOUT THIS FILM

8月30日(金) TOHOシネマズ シャンテ他全国順次公開

監督:ウォルター・サレス(『モーターサイクル・ダイアリーズ』『セントラル・ステーション』)
製作総指揮:フランシス・フォード・コッポラ(『ゴッドファーザー』『地獄の黙示録』)
音楽:グスターボ・サンタオラヤ(『ブロークバック・マウンテン』『バベル』)
出演:サム・ライリー、ギャレット・ヘドランド、クリステン・スチュワート、エイミー・アダムス、
トム・スターリッジ、キルスティン・ダンスト、ヴィゴ・モーテンセン 他

(2012年/フランス・ブラジル/英語/カラー/シネマスコープ/139分/字幕翻訳:松浦美奈/原題:ON THE ROAD/R-15)

♦公式Facebook:https://www.facebook.com/pages/映画オンザロード/536070576445759
♦公式Twitter:https://twitter.com/OnTheRoad_mov
♦配給:ブロードメディア・スタジオ
♦R-15

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