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『ザ・フューチャー』the Future

すこし不思議ですこし切ない<これから>を探す物語

小説家やコンテポラリー・アーティストとしても活躍するミランダ・ジュライ待望の新作は、すこし不思議ですこし切ない<これから>を探す物語だ。

35歳のソフィーとジェイソンは小さなアパートで同棲して4年目。いつもと変わらないようなほのぼのとした時間を過ごしていたある日、ケガをしている猫をと出会い動物シェルターに預ける。あと5年は生きるというその子猫を最後まで世話をすることを決め、迎えにくる約束をする。5年後に40歳を迎えること、そしてその後に続いていく人生を自覚したふたりは、パウパウと名づけたその子猫と再び出会うまでの30日間に、自分を変えようと心に誓い、それぞれに行動をはじめる。しかし、次第にふたりは距離と時間を離していく。

本作は、前作『君とボクの虹色の世界』とは明らかに違う空気をまとっている。当時32歳だったミランダ・ジュライが描いた温かさや優しさは、7年後の『ザ・フューチャー』では、心の深いところをえぐるような切実さや不安というものに姿を変えている。現実的だった世界は、ファンタジーを纏うようになった。それは、どちらかというと彼女の小説集「いちばんここに似合う人」のテイストに近いのかもしれない。前作の印象を好ましく思い、それを期待している方は、少し戸惑うかもしれない。しかし、本作のほうがミランダ・ジュライらしい気もする。

ファンタジーといってもそれは子供が夢見るようなそれではない。大人が生み出したそれはどこか哀しい。人の感情なんか無視して、無慈悲に過ぎていく時間の流れに取り残されていくような不安、ひとたび別の時間を歩み始めることで生まれる隔たり。いま過ごす時間の先に見える<これから>と、もうひとつの時間の先に見える<これから>で揺れる気持ち。

ミランダ・ジュライらしい、かわいさやシュールさのつまった映像のなかで、胸がつまるような空気につつまれていく。『エターナル・サンシャイン』や『マグノリア』なども担当したジョン・オブライオンの音楽も、Beach Houseの挿入曲”Master of None”も美しく、そしてとても切ない。

こうして書くと、とてもネガティブな感想みたいだが、これはとても素晴らしいことだと思う。観客が望むような物語や流れを描くことはむしろ容易い。そうではなく、これほどまでに描かなければならなかった気概を感じるし、たぶん、こうやってでしかこの物語は描けなかったはずだ。観終わってからしばらくその空気にとらわれ、すこしとまどい、言葉をなくしたけど、頭の中で自分の経験なんかをいろいろ思い出しながら、もう一度観たいという気にさせる。時間を戻すことは出来ないけど、時間は選ぶことができる。

ミランダ・ジュライの不思議にチカラは、不安になった<これから>を少し前向きな<ザ・フューチャー>にするなにかがある。


Reviewer : yuki takeuchi

ABOUT THIS FILM

1月19日(土)〜シアター・イメージフォーラムにてロードショー!

監督/脚本:ミランダ・ジュライ、製作:ジーナ・ウォン、ローマン・ポール、ジェハルド・マイナー、製作総指揮:スー・ブルース・スミス、共同製作:クリス・スティンソン、撮影:ニコライ・フォン・グリーニヴェニッツ、エリオット・ホステッター、編集:アンドリュー・バード、音楽:ジョン・オブライオン、キャスティング:ジャンヌ・マキャシー、ニコル・アベレラ、衣装:クリスティ・ウィッテンボーン

キャスト:ハミッシュ・リンクレイター、ミランダ・ジュライ、デヴィッド・ウォーショフスキー、ジョー・パターリック

挿入曲 ビーチハウス「マスター・オブ・ノーン」
日本版字幕 西山敦子

2011年 / 独米共同製作 / カラー / 1:1,85 / 35ミリ・デジタル / 91分

TRAILER