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『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』THE PLACE BEYOND THE PINES

『ブルーバレンタイン』の監督・主演タッグによる血と愛の因果の物語

人は誰かを愛し、やがて子を愛する。人は道を選択し、やがて道の彼方で新たな道を選ぶ。そのとき、受け継がれる血の中には物語が湛えられ、それは因果を巡る新たな物語を生む。

『ブルーバレンタイン』のデレク・シアフランス監督が、今や最注目実力俳優のライアン・グズリングと再び組んで描く本作は、愛と血を巡る3つの物語が紡がれていく。その物語と物語の紡ぎ方がとても素晴らしく、それによって「因果」や「愛」がどうやって人生のなかで、生まれ、受け継がれていくのか、ずっしりと感じられる。『ブルーバレンタイン』も素晴らしかったが、今作は夫婦という限定的なくくりではなく、もっと大きな範囲で、家族、そして彼らに関わってくる別の家族や人々にまで及ぶ大きな流れを湛える。交錯する時間ではなく、大きなひとつの流れとしての時間が描かれる。血や愛だけでなく、陰謀や犯罪、名誉や友情といった要素も盛り込まれ、しかもそれが必然的に、そして自然な流れとして登場する。シェイクスピアに代表されるような古典では、必ず血族にまつわる愛、名誉そして友情があり、そのための陰謀や裏切りがあった。そしてその抗うことのできない宿命と向きあう彼らを端から見つめる道化役がいた。それがここにもしっかりと描かれている。

宿命の糸がどのようにして繋がっていくか、それはやがてどのような模様を見せるのか。それがこの物語の中核になる。人の人生は、自分でも思いもよらぬような展開をみせるし、自分の与り知らぬところで、全く違った様相をみせることもある。それを描くこの物語は、あまり予備知識を得ないで観た方がよいと思う。

移動遊園地でのバイクショーでその日暮らしの生計を立てている天才的なライダー、ルーク(ライアン・グズリング)。あるとき偶然に昔の恋人ロミーナと出会い、彼女を追って町にやってくるが、実は自分との子供を生み、別の男と密かに暮らしていることを知る。ルークはその事実を知り、子供のために何かしてやりたいと思う。しかし、それは今までの彼の人生を変えてゆくことに繋がる。そして、それはその後15年に渡る3つの物語の源流となる。

ライアン・ゴズリングが相変わらず素晴らしい。登場の瞬間からその背中や表情、言葉のトーンに、ルークという人物の影や傷が感じられるようだ。もちろん、彼が天才的なドライバーといして登場する『ドライブ』と比較せざるをえないが、どちらも素晴らし作品だし、ある意味で姉妹編のような捉え方だってできる。ライアン・ゴズリングだからこそ生まれた2作品だと言える。

またルークの息子ジェイソンを演じるデイン・デハーンも素晴らしい。彼の登場によってこの物語は、ルークが主人公であるパートから一転し、ガス・ヴァン・サント作品のような雰囲気すら感じさせる。この転換が、血は受け継がれる、それはある種の宿命だが、また別の新しい人生でもある、ということを感じさせる。そして、これはとても個人的な推測なのだが、ジェイソンがとても重要な場面に直面するとき、場面の奥、フォーカスが合わないぼけた風景のなかにルークが存在しているように感じた。それは抽象的なもので実際には単なる景色の一部ですらないのだとも思うが、私は監督の意図なのではないかと思っている。そういう意味でルークが着る、血を連想させるような赤い革のジャケットはとても印象的だ。

他にも様々な場所で、「宿命」を感じさせるような演出、映像がある。父から子へと受け継がれていく物語は、さらにその道の先を感じさせてくれる遠くまで、私たちを導いてくれるだろう。


Reviewer : yuki takeuchi

ABOUT THIS FILM

5月25日(土)より新宿バルト9ほか全国ロードショー

監督:デレク・シアフランス
脚本:デレク・シアフランス、ベン・コッチオ、ダリウス・マーダー
撮影:ショーン・ボビット
音楽:マイク・パットン

出演:ライアン・ゴズリング、ブラッドリー・クーパー、エヴァ・メンデス、レイ・リオッタ、ローズ・バーン、ベン・メンデルソーン、デイン・デハーン

(2012年/アメリカ/カラー/英語/シネスコ/ドルビーデジタル/141分 PG-12)

配給:ファインフィルムズ

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