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『アデル、ブルーは熱い色』LA VIE D’ ADELE CHAPITRES 1 ET 2

スピルバーグが絶賛した鮮烈で、力強く、美しい愛が彩る人生のエピソード

スティーブン・スピルバーグが審査委員長をつとめる第66回カンヌ国際映画祭でパルムドールを獲得した本作『アデル、ブルーは熱い色』。しかも、本来は監督のみに贈られるこの賞だが、主演のアデル・エグザルコプロスとレア・セドゥのふたりの演技が素晴らしかったため、彼女らにも同時にこの賞を贈るというカンヌ史上初の授与となった。

原作は、世界各国で発売されているフランスの人気コミック「ブルーは熱い色」。主人公はどこにでもいるような普通の女子高校生のアデル。バスで高校に通い、バスの中で知り合った上級生トマとデートの約束を交わす。そして後日、その待ち合わせ場所に向かう途中、街中で青い髪の女性とすれ違う。一瞬、彼女たちの視線が交わった、そのとき、既にアデルの心は奪われていた。変わらずトマとの付き合いは続いていたものの、アデルの心の中は、あの青い髪の女に満たされていて、自己嫌悪にかられた彼女は、トマに別れを告げる。そして、アデルは、あの偶然の出来事がきっかけとなり、青い髪の女の再び出会う。彼女の名前はエマ。「人生に偶然なんてない」と言い、アデルとエマの物語が始まっていく。

この作品は、なにも彼女たちのこの恋愛の物語が、至高の、特別なものなのだということを表してはいない。数多くのラブストーリーが生み出され、いまや既視感があるような物語やクリシェから逃れるように意表をつくような設定が多いなか、むしろ、王道とも言えるような物語の展開でもあるのに、こんなにも新鮮に物語を感じることが出来ることに驚かされる。それは本作が、女性同士の恋愛を描いているからということだからではない。もちろん、女性同士の大胆で、美しく、官能的なラブシーンは、この作品のひとつの特徴であることは確かだし、そもそも、同性愛をストレートに描くということがまだ珍しいと捉えられるような風潮は少なからずあるかもしれない。しかし、私は全くそう思わないし、現実社会であってもセクシャルマイノリティの人々に対して、自身とジェンダーに関する意識が異なるからと言って、何の違和感も感じない。この映画もそこを強調したような描き方をしているようには見えない。それ以上に、印象に残るのは、彼女たちたちがこの物語のなかで見せる、生きた表情や感情なのだ。それら全てものが自然に、素直に、無垢なまま、スクリーンの上に映し出されていく。なにひとつ淀むことなくありのままのアデルとエマの感情。何気ない日常から恋愛における喜びや苦しみ、そして当然にようにそこには当事者たちが愛を深めるために築く美しい官能があって、それらすべてが演技ということを忘れさせ、リアルな彼女たちの人生を観ているのだと感じさせるほどに、スクリーンから溢れ出している。だからと言って、それがドキュメンタリーのようだということでもない。映像は周到に緻密に画面を構成し、彼女たちの感情を引き出す。細部に人生の偶然や必然の欠片を散りばめ、それらを無理なくつないでいくストーリーテリングは淀みない。そして、細やかな演出(例えば、ふたりの些細な仕草や会話、食事の仕方、彼女の周りの人たちたちに至るまで、それらが次第に彼女たちの人生を左右する要因にもなっていく)。物語が始まって、幕が閉じるまで、作り手の存在は、ふたりのために最小であり最大であり、最善のバランスであり続けているように感じる。

『アデル、ブルーは熱い色』のフランス語の原題は、“アデルの人生 チャプター1&2”という意味になる。アデルは、エマのとの出会いよって人生の第1章をスタートさせる。そして、愛によって人生の大きな喜びや苦悩を感じるとともに、その愛はアデルの人生が第2章に移り変わってもなお、彼女を捉え続ける。観客は、アデルの熱い感情とともに、彼女の人生の一部を共有することになる。


Reviewer : yuki takeuchi

ABOUT THIS FILM

2014年4月5日(土)より、新宿バルト9、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー

監督・脚本:アブデラティフ・ケシシュ 
原作:ジュリー・マロ「Blue is the warmest color」
出演:レア・セドゥ、アデル・エグザルコプロス、サリム・ケシゥシュ、モナ・ヴァルラヴェン、ジェレミー・ラユルトほか
原題:LA VIE D’ ADELE CHAPITRES 1 ET 2/2013/フランス/フランス語/179分/R-18/日本語字幕:松岡葉子/配給:コムストック・グループ/配給協力:キノフィルムズ/宣伝:セテラ・インターナショナル/宣伝協力:テレザ+プリマ・ステラ

2013年カンヌ国際映画祭パルムドール受賞・国際批評家連盟賞受賞

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