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『愛の渦』

岸田國士戯曲賞受賞の伝説の舞台が映画化!人間のむきだしの欲望が渦巻く衝撃作!

閑静な住宅街の一角にあるマンションの一室に集まったのは、絶えず俯いている暗いニート、眼鏡をかけた普通そうな女子大生、茶髪のフリーター、太った男、気の強そうな保育士、今どきのOL、幾つものピアスをつけた痩せた女。普段の生活では交わりそうもない男と女たちが、集まったのは乱交パーティーを仕切る秘密クラブ。男性は2万円、女性1000円、カップル5000円。ただセックスがしたいという欲望を滑稽なまでにむきだしにして、様々な感情が渦巻く夜が朝まで続く…。

何年も前に本作のオリジナルである舞台作品を実際に観ている。そのときの衝撃は凄かった。内容や舞台上で繰り広げられていたことが凄まじかったのはもちろんだが、それ以上に、いままで舞台を観てきたなかで、観賞後にこんな感情にさせられたことはなかったというほどに、それは純粋に舞台作品として素晴しかったのだ。映画とは表現方法そのものが異なる舞台では、観客と役者が地続きの空間に同居し、そして生身の身体がそこ存在している。映画のようにスクリーンの向こう側と客席という境界がないからこそ感じる、そこで行われていることを“生”で観ているという感覚。それはとても強烈だ。なぜなら、そこにいる人物たちは、ほとんどバスタオル一枚で、そして、全てを脱ぎ捨ててセックスに及ぶ。しかも、映画のように切り取られた枠の外で映ることのないところさえ、見てはいけないところさえ見えてしまうこともあるのだ。そんな状況で各々の欲望や感情が渦まく一夜を目撃し、そして呆気にとられるような結末を迎える。それは凄まじい体験だった。

その舞台で受けたその衝撃を損なうことなく映画にすることができるのか?という思いがあったが、そんなものは杞憂に終わった。

演劇ではできない人物にカメラでクローズアップするという手法は、演劇とは違った生々しさを作品全体に与え、そこにいる人間を際立たせる。出会ったばかりの異性にへつらい伺うような表情から、煩わしい関係性など捨て欲望のみの表情へと変化すらさまやそれぞれ機微、性欲も身体もむきだしになった人物たちの肌の生々しい質感。目的はお互い知れているはずなのにバスタオル1枚で遠回しに相手を伺う姿や欲を曝け出す姿の緊迫感と滑稽さ。そして相手を変えてまた同じことを繰り返す。繰り返される緊張と緩和に、、、いや、ただただスクリーンを見つめる人間の欲望と下世話な好奇心を刺激して、怒濤の渦の中に巻き込んでいく。三浦大輔は映画においても、やっぱり凄い。映画『愛の渦』は衝撃的だ。むきだしだ。笑える。虚しい。バカバカしい。人間らしさも、愛も感じる。そして、全てが終り朝やってきたときの陽の光の残酷さったらない。人間の惨めさったらない。そして、またしても、同じ気持ちになってしまった。いままで映画を観てきたなかでこんな感情にさせられたことはなかったと…。しかも、舞台作品ではなかったエピソードまで添えられ、さらにひと渦巻いているのだがら容赦ない。

これは映画館で観るべきだ。ひとりで観るのも良いかもしれない。あの部屋に集まった彼らと同じように、どこかにやましい気持ちを抱えてスクリーンの前に集まって、R18+の映画を観て、見知らぬ他人と笑いや衝撃なんかを共有する。そうすると、すべてが終わった後、朝の光のなかを帰っていく彼らのように、ひとりでなんとも言えない感情を感じを味わえるはずだ。


Reviewer : yuki takeuchi

ABOUT THIS FILM

2014年3月1日(土)テアトル新宿他にて公開

原作・脚本・監督:三浦大輔 
出演:池松壮亮、門脇 麦、新井浩文、滝藤賢一、三津谷葉子 、窪塚洋介、 田中哲司

制作プロダクション:ステアウェイ
製作:映画「愛の渦」製作委員会(東映ビデオ、クロックワークス)
配給:クロックワークス

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