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『ビフォア・ミッドナイト』Before Midnight

出会ってから18年、再会から9年、そして愛に辿り着く真夜中まで

なんて素晴らしいのだろう。また、このふたりを再びスクリーンで観ることができるなんて…。

18年前、ヨーロッパを走る長距離列車のなかで出会い、惹かれあい、ウィーンの美しい街で夜明けまでの数時間を一緒に過ごしたふたり。ふたりはお互いのことを語り合った。あのときは、まだふたりとも学生で、初々しくて、ロマンチックで、そして未来を見つめていた(『ビフォア・サンライズ』)。9年前、パリの書店で再会したふたり。ジェシーはウィーンでの一夜の出来事を綴り小説家に、セリーヌは環境保護団体で働いている。彼らはそれぞれの時間を経て、大人になっていた。ジェシーが飛行機で発つ夕暮れまでのほんの束の間、ふたりは過去のすれ違いと距離を埋めるように、再びお互いの思いを語り合う。そして、ニーナ・シモンの曲が彩る美しい余韻を残して幕は閉じられた。(『ビフォア・サンセット』)。

そして、現在。セリーヌとジェシーのその後がついに語られる。9年前のエンディングから「ふたりはどうなったのだろう?」とずっと抱えてきた思いに本作『ビフォア・ミッドナイト』は答えてくれる。それをここで言ってしまうのはもったいない。是非観て確かめていただきたい。なぜなら、セリーヌとジェシーの人生の行方を追いかけることが、このシリーズの楽しみのひとつのはずだから。

今回もセリーヌとジェシーの掛け合いは、本当に素晴しい。冒頭の長回しのシーンから喋る喋る。ウィットにとんでいて、洒落ていて、ときおり人生のかけらを見据えるような会話の数々。とても自然でアドリブでも入っているのではと思うほどなのだが、全てセリフが決まっているというのだから驚きだ。ジュリー・デルピーもイーサン・ホークも、相変わらず本当に素晴しい演技を見せてくれる。そして、当たり前ながらセリーヌとジェシーも年をとった。顔には皺もできたし体つきも変わった。彼らの話す内容もとても現実的で、悩ましい問題も抱えている。1作目、2作目とは比べものにならないほどにビターな内容だ。セリーヌがジェシーに「今日列車で出会ったら、私を魅力的だと思う?」と尋ねるシーンがとても印象的だ。人はどうしても過ぎ去ったことを思い慕わずにはいられない。長く生きれば生きるほど、いろいろなものを得ては、失っていく。それでも、ふたりはとても魅力的だ。それは人生を重ねることの美しさなのだと思う。いままでの18年があったからこそ、彼らの言葉が心に染みてくる。もしかしたら、彼らと一緒に自分も年をとったからそう思うのかも知れない。

すべての始まりとなった18年前に、ジェシーがセリーヌに列車から降りるように誘ったあの時のあの言葉。「今から10年後か20年後、君は結婚している。結婚生活はかつての情熱を失った。これは未来から現在へのタイムトラベル。若いころに失ったかもしれない何かを探す旅」。『ビフォア・ミッドナイト』は、まさにこの言葉に対するアンサーなのだと思う。

セリーヌとジェシーのように、わたしたちはこのシリーズの3つの作品と出会い、再会し、現在をともに過ごしてきた。こうして、映画と共に年をとることができるなんて、なんて素敵なことなのだろう。現在に生きながら、何度も振り返り懐かしみ、何度も未来を思い期待をする。時間旅行のように…。だからこそ、いつかまた彼らに出会うことを望まずにはいられない。


Reviewer : yuki takeuchi

ABOUT THIS FILM

1/18 Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、バルト9ほか全国ロードショー!

出演:イーサン・ホーク、ジュリー・デルピー
監督:リチャード・リンクレイター
脚本:リチャード・リンクレイター、イーサン・ホーク、ジュリー・デルピー
キャラクター原案:リチャード・リンクレイター、キム・クリザン

(2013 年/アメリカ映画/英語・仏語/108分/ビスタサイズ/デジタル5.1ch/)

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