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『アイム・ソー・エキサイテッド!』I'm so excited!

ペドロ・アルモドバルの原点回帰!ユーモア満載のフライト・コメディ!

『トーク・トゥ・ハー』や『ボルベール<帰郷>』『抱擁のかけら』など、ペドロ・アルモドバルと言えば、人間の業や欲望、深淵な恋愛や家族愛を重厚な語りで描いてきた印象が強い。前作『私が、生きる肌』は、目眩すら感じさせるような倒錯した愛のカタチを描き、これぞアルモドバル!なんて思わせてくれた。しかし、最近のこういった作風からすっかり忘れてしまっていたのだが、いやいや、本作『アイム・ソー・エキサイテッド!』だって、これぞアルモドバル!と思わせてくれる初期から中期の作品を彷彿とさせる痛快で、ナンセンスで、ちょっとお下品(もちろんいい意味で?)なコメディだ。

マドリードを出発してメキシコ・シティを目指すはずの飛行機に、機内トラブル発生。着陸可能な飛行場が見つからず上空を旋回中。そんな緊急事態のフライトのなか、ビジネスクラスの乗客をリラックスさせようと奮闘をはじめるゲイの客室乗務員(CA)トリオ。不祥事を働いた銀行頭取の男、訳あり新婚カップル、落ちぶれた元人気俳優、スピリチュアルなアラフォー女性、国家権力者の秘密をにぎるSM女王、メキシコ出身の自称・警備の実は殺し屋など、一癖も二癖もある乗客ばかりのビジネスクラス。さらにバイセクシャルの機長と副機長は、オネエCAとデキてる始末。

エコノミークラスは、担当のCAも乗客も筋弛緩剤入りのドリンクで全員爆睡させられているし、オネエCAたちはギャレー(機内食などを準備する場所)でテキーラを引っかけたり、お祈りしたり。少々強引で荒唐無稽でトホホな展開にクスクス、失笑&苦笑していると、オネエCAたちがトラブルに動揺する乗客たちをリラックスさせようと、80年代に活躍したポインター・シスターズ「I’m So Excited」を機内で踊り歌いはじめ(と言ってもリップシンク。これがまたオネエっぽい・笑)、おかしなフライトはさらにさらに上昇!くだらなくて、ちょっとお下品でエロティックでイケナイな展開に、序盤は観る側も構えてしまうかもしれないけど、いつの間にやら彼らとのフライトが楽しくなってきて、愛嬌たっぷりな彼らに不思議と親近感すら沸いてきてしまうはず(?)。

そんなキャスト陣も豪華で、アルモドバル作品から羽ばたき、いまや国際的スターになったペネロペ・クルスとアントニオ・バンデラスが冒頭からカメオ出演(機内トラブルの元凶は彼ら!)。さらに、これまでのアルモドバル作品に出演した俳優たちが多数出演。あの作品のあの人がこんな役を?!なんて見方も楽しい。

最近の作品とは違って、ライトで気軽に楽しめる。と言っても、いい意味でちょっと安っぽく懐かしいタイトルバックや「I’m So Excited」など使用される曲の選曲、スクリューボール・コメディのようなテイスト、往年のコメディ・ドラマを観ているような雰囲気(もちろん“お下品”な表現は昔はなかったけど)、豪華スペイン人俳優たちの共演、いちからデザインされたという航空機、監督の愛情を感じさせる一風変わったキャラクターたちなど、中身はしっかり、かつ楽しそうに作り込まれていて、ちゃんとペドロ・アルモドバルを感じさせてくれる(初デートには向いてないかもしれないけど…)。とにかく、この作品は難しいことは考えずに観た方が絶対楽しい。とても満足させてくれる一品だ。


Reviewer : yuki takeuchi

ABOUT THIS FILM

1月25日(土)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町他全国公開

監督・脚本:ペドロ・アルモドバル
出演:カルロス・アレセス、ハビエル・カマラ、ラウル・アレバロ、ロラ・ドゥエニャス、セシリア・ロス、ブランカ・スアレス

2013年/5.1ch/ビスタ/スペイン/90分/R15+ 

<配給>ショウゲート

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