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『カフェ・ド・フロール』Café de Flore

ふたつの時代を超えて結び合う愛の幸福と悲劇を描いた物語

第86回アカデミー賞で主演男優賞(マシュー・マコノヒー)・助演男優賞・メイクヘアスタイリング賞の見事3冠受賞に輝いた『ダラス・バイヤーズクラブ』のジャン=マルク・ヴァレ監督による『カフェ・ド・フロール』は、ふたつの時代を超えて結び合う愛の幸福と悲劇を描いた物語だ。

1969年フランスのパリ、けっして裕福ではないが、唯一の生き甲斐である息子ローランと幸せに暮らすシングルマザーのジャクリーヌ。ジャクリーヌは障害を抱える息子のために懸命の働き、習い事をさせ、普通の学校にも通わせる。あるとき、ローランは学校に転入してきた同じ障害をもつ少女ヴェラと出会い、強く惹かれ合っていく。しかし、片時も離れたがらないふたりを学校は問題視し、専用の施設に入れることをすすめてくる。また、母親ではなくヴェラへと執着していくローランに、これまでに息子のために献身的に生きてきたジャクリーヌは喪失感と望みが絶たれるような感覚をおぼえ始める。一方、現代のカナダのモントリオール。DJとして世界的に活躍し裕福で、前妻キャロルとの間に2人の子供をもつアントワーヌは、離婚後2年経った現在はローズという新たな恋人がいる。しかし、2人の子供から敬遠され始めている。若き日に出会い、お互いを運命の人だと感じていたアントワーヌのキャロルだったが現実はそうはいかず、キャロルは離婚後も立ち直れないまま、彼女もまた喪失感とのなかで彷徨っている。ふたつの時代の登場人物たちと物語が、かすかに繋がり合うように交互に描かれながら、2つの結末に向かっていく。

人生はときにどうしようもない壁に行き当たったり、自分の力だけではどうにもできないような大きな力に人生を大きく動かされてしまうことがあるかもしれない。それを“運命”や“宿命”という言葉で表すこともあるだろうし、“現実的”に本人の行いのせいであると考えることもあるだろう。現代においては後者のような考え方を持つほうが多いのかもしれないが、ジャクリーヌのような何代も前の世代の人々にとっては、もう少し願いや見えないものに託す思いに対して真摯だったかもしれない。例えば、今生でどうしようもない辛く苦しい状況でうまく生きることができなくても、いつかは、もしくは後生では、と願うような。監督は、輪廻ということに強い関心をもって本作を作ったわけではないと語っているが、簡単に説明してしまうと輪廻のような…。

現代に生きる私たちから見れば、どうしても現実的な考えで観てしまうだろう。そうすると途端に、この作品のもつテーマはとっつきにくくなるかもしれない(物語のなかでもそういう懐疑的な視点も取り入れている)。しかし、ジャクリーヌを主体にして考えると、彼女のとった決断は決して最良の選択だったとは言えないかもしれないが、彼女の愛や望み(もしくはエゴ?)に寄り添ってあげることができるかもしれない。

本作は、ある意味挑戦的な作品でもある。前途のような、現代においては少し非現実的とも言えるようなテーマは扱うことが難しい。語られるストーリーが誰も納得するような、例えばハッピーエンドであれば、観客にとってそういったテーマもある程度受け入れやすいかもしれないが、本作は決してそうではないからだ。神秘的なこと、超越的なことを決して都合よく描くのではなく、人間の業やどうしようもない弱さを見据えてながらも、それらを果敢に描こうとしている。


Reviewer : yuki takeuchi

ABOUT THIS FILM

3/28(土)よりYEBISU GARDEN CINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開

監督・脚本:ジャン=マルク・ヴァレ
撮影:ピエール・コットロー
出演:ヴァネッサ・パラディ、ケヴィン・パラン、エレーヌ・フローラン、エヴリーヌ・ブロシュ、マラン・ゲリエ

2011年/カナダ・フランス/カラー/英語・フランス語/シネスコ/5.1ch/120分

配給:ファインフィルムズ

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