UNZIP

『さよなら、人類』A Pigeon Sat on a Branch Reflecting on Existence

構想15年、精巧なるアートデレクションと研ぎ澄まされたシュールな世界観、ロイ・アンダーソン・ワールドここに極まる!

絵画的かつ独特なセンスを放つアートデレクションとそのシュールな世界観で、日本でも熱狂的ファンを獲得するスウェーデンの巨匠ロイ・アンダーソン監督による最新作。
『散歩する惑星』『愛おしき隣人』と続いてきた“リンビング・トリロジー” 人間についての3部作と総称されたシリーズの最終章となる『さよなら、人類』は、前2作を更に精巧に研ぎ澄ましたまさしくロイ・アンダーソンの集大成にふさわしい作品となっている。

全39からなるワンカットの短編のようなシーンが数珠繋ぎ的に映し出されていく中で、面白グッズ(ドラキュラの歯、笑い袋、歯なし爺のマスク、といったグッズの絶妙なダメさ加減がいい)を売り歩く冴えないセールスマンコンビのサムとヨナタンが軸になり、様々な人生を目撃していくわけですが、とにかくその一つ一つのエピソードが秀逸なのです。

物語は冒頭、恐竜の骨格標本や鳥の剥製などが展示された博物館のシーンから始まる。展示された剥製をまじまじと見つめる男、そんな人間の姿を鳥の剥製たちは高いところから見下ろしているかのようにみえる。そのシーンからのスウェーデン語のタイトル(直訳すると「生存を熟考する枝の上の鳩」といった意味らしい)、そして始まるのが「死との出会い」という3つのエピソードなのですが、すっかりこの流れでハートを掴まれてしまいます。しかも、その「死との出会い」のエピソードが愛すべきしょうもなさというか、、、。例えば、フェリーのカフェテリアで男性客が会計後に心臓発作で倒れてしまう。「どなたかいかが?シュリンプ・サンドとビールをタダで」と店員が乗客に呼びかけ沈黙の中、中年の男が小さく手をあげる、、、この滑稽なシーンになんとも言えないおかしみがこみ上げる。(確かにその後注文はどうなるんだ?と考えてしまうけども、、、)
どのシーンもあえてシュールに見せようとしているわけではなく、結果的にそんな人間の滑稽さがおかしみを生むというか、むしろ現実とはこのような場面の方が多いのではないか。どんなシリアスな局面でも(だからこそ?)、思い返してみるとちょっと笑っちゃうなという出来事は誰しも思いあたるふしがあるのではないでしょうか。他にも、ダンスのレッスン中、若い男性生徒にセクハラを迫る女性教師(このエピソードお気入りです)、突然現代のバーに現れる18世紀のゲイのスウェーデン国王と騎馬隊、巨大なオルガン(?)の中でゆっくりとローストされていく囚人達など、ロイ・アンダーソンならではの独特すぎるセンスで切り取った様々な人間見本市が繰り広げられる。

ところで、全39シーンからなる本作中、幾度となく「元気そうで何より」という言葉が発せられるシーンが登場する。さて、この言葉を頻繁に登場させた監督の意図とは何だろう。人類を上から見下ろしている神的な存在がいるとして(もしくは冒頭の鳩の剥製?)、「人間って変な生き物だな、、、でも、元気そうで何より」なんて思っているのかな、、、などと個人的には思ったりして。
“リビング・トリロジー”はひとまず完結とのことですが、ロイ・アンダーソン監督にはまだまだ愚かで滑稽な、でも愛すべき人間達を描いていってほしいですね。


Reviewer : yoshi

ABOUT THIS FILM

8月8日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMA 他、全国順次ロードショー!

監督・脚本:ロイ・アンダーソン(『散歩する惑星』『愛おしき隣人』)
出演:ホルガー・アンダーソン、ニルス・ウェストブロム

2014年/スウェーデン=ノルウェー=フランス=ドイツ/カラー/100分

後援:スウェーデン大使館
提供:ビターズ・エンド、スタイルジャム、サードストリート
配給:ビターズ・エンド

TRAILER