『サンドラの週末』deux jours, une nuit
労働、人との繋がりを背景に、自身を見つけ出す等身大の一人の女性の物語
『ロゼッタ』、『息子のまなざし』、『少年と自転車』など2度のパルムドール大賞含む、カンヌ国際映画祭で史上初の5作品連続主要賞6賞の受賞を誇るダルデンヌ兄弟が、主演にマリオン・コティアールを迎えた最新作『サンドラの週末』。
体調不良から休職していたが、ようやく復職できることになった矢先の金曜日に上司から解雇を言い渡されてしまうサンドラ。解雇を免れる方法は、16人の同僚のうち過半数が自らのボーナスを諦めること。ボーナスをとるか、サンドラをとるか、月曜日の投票に向け、夫に支えられながら、同僚たちを説得に回るサンドラの週末がはじまる、、、。
ある意味大きな事件は全く起きない、淡々と主人公サンドラ(と夫)が同僚を説得しに行く週末を描いただけとも言って良い映画なのですが、何故だか引き込まれてしまう面白さがある。ドキュメンタリーに限りなく近い感触で、ほぼ主人公サンドラの視点でのみ展開して行く物語に、気づけば一緒に試練を共有している様な感覚に陥っていくのです。一見会社と解雇される個人という対立関係見えそうですが、単純な善悪という関係性ではなく、サンドラをとるか、ボーナスをとるか迫られる人たちの立場もわかるというか(例えば、「妻がサンドラ同様失業しそのボーナスがなければ自分たちも生活できない人」や「その仕事で得る賃金だけでは足らず休日さえも別の仕事をしている人」たちなど)、自分もどちら側の立場にもなりうる可能性がある訳で、、、ほんの週末の出来事なのだけど、すごくリアルに現代の社会の縮図が描かれているところに共感を覚えるし、面白さを感じる。
共感というところで言うと、主人公サンドラはすごく強い女性でもないし、弱すぎる女性でもない、本当に等身大な普通の女性というところもこの物語のポイントかもしれない。(気づけば、数々のメジャー作品に出演して来た女優だったことすら忘れてしまう程のマリオン・コティヤールの作品への溶け込み具合にも驚く。今作でアカデミー賞主演女優賞にノミネートというのも非常に納得です!)そんな普通の女性が長い週末を経て、月曜日にほんの少しだけ強くなっている。ラストのあの清々しい微笑みが、この作品の素晴らしさの全てを語っているのではないでしょうか。壮大な感動作もいいけれど、こういう地に足が着いたささやかな物語にこそ明日への希望をもらえるのでは、、、??なんて私は思ったりします。
Reviewer : yoshi
ABOUT THIS FILM
5月23日 Bunkamura ル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー !出演:マリオン・コティヤール、ファブリツィオ・ロンジォーネ
監督・脚本:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
2014年/ベルギー=フランス=イタリア/95分