UNZIPでおなじみのライター陣と編集部スタッフが選んだトップ5リスト。
きさらぎ尚(映画評論家)

1位:『地獄の黙示録<特別完全版>』

20年以上も前の名作を今さらベストワン・ムービーにするのはためらいもあったが、これを越える新作が無いことの方がむしろ問題。物語を映像で語ることよりも、仕掛けやCGで見せることに終始した大作が目立つ昨今(これはこれで面白いが)。主にプランテーションのエピソードを加えたこの<特別完全版>から、コッポラの映画に対する気迫と並外れた才能がビシビシ伝わってくる。

2位:『ロード・トゥ・パーディション』
映画の三大要素である脚本・演出・演技の三拍子が揃っている。イギリスの舞台演出家がハリウッド映画に進出するケースは近年顕著だが、サム・メンデスもその一人。デビュー作の『アメリカン・ビューティー』でアカデミー賞を獲った才能がビギナーズラックでなかったことを今回で証明。そして父と息子の絆を感動的に見せたトム・ハンクスとポール・ニューマンには大喝采を贈りたい。

3位:『トゥーランドット』
これはオペラ「トゥーランドット」の北京公演の準備から本番までを撮影したドキュメンタリー。オペラの演出にあたるオペラ初体験のチャン・イーモウ監督の気負い。それが空回りしてオペラが骨の髄まで染み込んでいるイタリア側スタッフとの確執。公演の群集シーンに参加する人民軍兵士の戸惑いに、中国人女優の気合い。文化の出合い頭というか、事始めの面白いこと!? 良く出来たドキュメンタリーの面白さが劇映画の比ではないことを再認識。

4位:『ガウディアフタヌーン』
監督のスーザン・シーデルマンをはじめ、ジュディ・デイヴィス、リリ・テイラー、マーシャ・ゲイ・ハーデンの、いかにもといえばいかにもの女優のキャラが存分に生かされたコメディ。女だと思っていた人物が実は男だったり、その反対だったり。セクシュアリティへの概念と、生物学的性差のギャップが面白い。

5位:『ノー・マンズ・ランド』
ボスニアとセルビアの中間地帯ノー・マンズ・ランドに取り残されたボスニア軍兵士と見回りに来たセルビア軍兵士を描いた反戦映画。死体だと思って地雷取り扱いの実験台にした兵士が蘇生したのはいいけれど、少しでも動けば地雷が爆発するというもので、人はあまりの悲劇の渦中にいる時は、もう笑うしか術はない。このことの救いようの無い事態が妙にユーモラス。
蜂賀亨
※順不同
∵『ピンポン』
原作に忠実に映画にしたということだが、やはり松本大洋の世界観をあそこまで映像にしたのはたいしたもの。「アクマ」がかなり気に入ったのだが、同時に窪塚の「ペコ」のめちゃくちゃポジティブさは元気がでる。見終わった後元気が出る映画は最近ではなかなかないのでは。

『8人の女たち』
豪華な女性スターたちの登場そして、音楽、ファッション、ライティング、色使いなどハリウッド映画の時代感を再び感じさせてくれた。一軒の家の中だけで展開されるサスペンスという設定やストーリーはまさにヒッチコックを思い出させる。女性スターしか出てこないのはすごくオゾンらしい狙いだと思うが、映画館で観客のほとんどが女性というのも妙な感じがした。

『ザ・ロイヤル・テネンバウムス』
哀愁感ある映画といったらいいであろうか。最初はアディダスとか、ラコステといったようなファッショナブルなイメージばかりが先行したかもしれないが、ニューヨークとファミリーを舞台にした、哀愁いっぱいの映画。外見を語るだけではなく、映画は総合的に、ファッションとかサウンドとかストーリーなどすべてバランスいいのが大切だなあと実感させてくれた。サウンドトラックが大好きです。

『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』
エピソード1があまりにも子供だまし的な映画だったので少しがっかりしたのだが、今回はさすが「スターウォーズシリーズ」と実感させてくれた。アニメーションとかCGとか実写とか、そういう技術的な部分はもうどうでもよくて、エンターテイメント映画として十分に楽しめた。

『ヒューマンネイチュア』
ミシェル・ゴンドリー初の映画作品ということで話題になった映画。映画的には賛否両論だろうが『マルコビッチの穴』やこの映画はいろいろな意味で可能性を感じさせてくれた。最近の映画はどれも同じようなパターンのものばかりなので、スパイク・ジョーンズやゴンドリーのような映画監督や、チャーリー・カウフマンのような脚本家たちが新しい映画スタイルを展開してくれる可能性があるに違いないと思っている。
梶浦秀麿(ライター)

1位:『ドニー・ダーコ』『アイ・アム・サム』
玄人筋の悪評に抗してホメちぎりたいメタ感動作2つ。どちらも号泣はしなかったけど、ヒヤリとする哀しみと恐い感じがずっと心に残ってしまって、いまだそのヘンな魅力を探究中。普通のセンシティヴな感動作としても観られるのがミソなんだけれど…。

2位:『ロード・オブ・ザ・リング』『スパイダーマン』
二人のホラー系オタク監督の大成ぶりに拍手! 『ロード…』の雄大な風景描写と原作や字幕のダメさをも巻き込んでのスリリングな展開にゾクゾクする。んで『スパイダーマン』はオタク心(童貞心?)揺さぶる恋愛観がツボだし細部のこだわりにニヤニヤした。

3位:『奇跡の歌』と『海辺の家』
「父と息子もの」秀作2本! あざといけど泣けた。あ、01年公開の『イルマーレ』も部分的「父と息子もの」で、「海辺の家」話でもあったなぁ。

4位:『害虫』と『コンセント』(&ビデオ化『少女〜an adolescent』)
反社会系ヒロインの魅力が、原作や映画の本筋すら超えて爆発する、萌え萌え〜(笑)な女優惚れ3本! 今頃ビデオで観た『少女』はとにかく小沢まゆに参った降参。
5位:『ノーマンズ・ランド』と『鬼が来た!』
これも2本合わせ技で「戦争の不条理」を衝く! どちらも悪趣味な後味だけどね。

と、突出したベストが思い浮かばんので合わせ技でズルしてしまった。他にも、『マルホランド・ドライブ』は別格だし、キャスティングに趣味的な愉しみがあった『ズーランダー』(with『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』 『エネミー・ライン』)も外せないし、『ダスト』の野放図なパワー(あるいは端正なマジック・リアリズム風味)は裏ベストにしてあげたいとか、『13ゴースト』のお化け屋敷のデザイン最高!とか、『ジェイソンX』の開き直った娯楽性爆笑!とか、『バイオ・ハザード』の『マトリックス』的ディテールこだわり症も小粒だが好感触!とか、あと『ピンポン』や『イノセント・ボーイズ』や『ビューティフル・マインド』なんてのも色々語り倒したくなる誘惑のある問題作ではあったんだが…。でも02年は観るはずだった映画の半分くらい(約150本)しか観てないので、もっと凄いの観逃してるかと思うと悔しいやら情けないやら…って気分だ。トホホ。
nakamura [UNZIP]

1位:『スチュアート・リトル2』
今年、一番人に勧めた映画! いい人だらけのリトル家とねずみのスチュアートの、笑いあり涙ありの物語。マイケル・J・フォックスが乗り移ったかのようにリアルなスチュアートの演技には感動! 彼の演技をこんな形でまた観ることができるとは思いませんでした。脚本も完璧だと思います。

2位:『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』
何故だかわからないまま感動し、迫力に圧倒され、涙が止まらなかった作品。ちょっとダサイんだけど心に突き刺さる音楽にも、詩にも、主人公ヘドウィグの生きざまにも、激しく心を揺さぶられました。ライブシーンはめちゃくちゃかっこいい。心に沁みる、とてもいい映画です。

3位:『モンスターズ・インク』
PIXERの仕事ってやっぱり大好き。DVDを買って吹き替え版もチェックしましたが、爆笑問題田中が意外にはまっていてびっくり。子供のころに大切にしていたものを思い出させてくれるような、素敵な作品。ラストシーンでは、何度観ても泣いてしまいます。

4位:『メルシィ!人生』
試写室で大爆笑! 最近好きなフランス産悲喜劇の中で、今年一番面白かった作品。シリアスな印象の強いダニエル・オートゥイユが演じる主人公が哀しいほど可笑しく、コンドーム型の帽子をかぶった姿なんて、涙が出るほど笑える。芸達者な俳優が集結していて、中でもジェラール・ドパルデューはさすがの存在感。

5位:『DOGTOWN & Z-BOYS』
ドキュメンタリーに開眼するきっかけになった作品。いまのスケートボードカルチャーがどうやって生まれたのか、この映画を見るとよーくわかる! 個人的には2002年はドキュメンタリー映画の当たり年だったように感じています。ヒップホップDJのドキュメンタリー、『SCRATCH』も大おすすめ!
imafuku [UNZIP]

1位:『刑務所の中』
自身の刑務所体験を漫画に興し、発売以来多くの著名人から絶賛され現在も版を重ねる花輪和一の大ヒットコミックの映画化。獄中ライフが淡々とコミカルに、原作のイメージを壊すことなく映像化。3度3度の食事がとにかく美味しそう!健康食だな、まさしく。

2位:『穴』
私の中で注目度NO.1女優のソーラ・バーチ。可愛いの可愛くないのかわからない…。そんな彼女のミステリアスな演技と緊張感溢れるサスペンスタッチのストーリー、人間の欲望と鋭く切り込んだ心理描写に衝撃を受けました。印象深い作品です。

3位:『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』
「天才」「天才」「天才」といった「天才一家」の没落から再生への物語。一家に降り掛かる難題、奇問の数々はそもそも設定から無理のある話だと思いつつ、悲劇と喜劇が隣り合わせの展開に唖然とさせられてしまいました。ラコステ、フィラ、アディダスといった、こだわりが生んだ流行ファッションもセンスの良さを感じました。

4位:『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』
音楽がとても切なくてよかった!観た後、すぐにサントラが欲しいと思った1本です。切ない音楽と“絵文字”で生命誕生の描写などキューンとくるものが。また、ライブ感を重視した映像に、さらにリアルな感動を覚えた作品です。

5位:『キューティ・ブロンド』
自分を磨く努力を惜しまず、日夜ブロンド研究にいそしむ、100%ビバヒル・ライクな人生をエンジョイするバービー人形のような女の子。そんな彼女が失恋をバネにハーバードロースクールを目指すというサクセスストーリー。何ごとにもポジティブ。周囲の偏見をもはねとばす。明るく颯爽としている彼女の姿に共感と勇気を与えられる女の子は多いのではないでしょうか。

asada [slack]

1位:『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』
エピソード1は新キャラの登場で少々困惑しましたが、このエピソード2で全ての物語りが繋がりだした!という感じです。エピソード3が待ち遠しい…。

2位:『マイノリティ・リポート』
網膜で個人識別をしたり、広告が呼び掛けてきたり、“本当にあり得そう”な近未来的映像にワクワクしました。人によってはいろいろな意見のある映画だけど、私は単純におもしろかったと思います。

3位:『8人の女たち』
出演している女優がすごいメンバーなので、それだけでも楽しめる映画でした。それに音楽や衣装がすごくよくて、久しぶりに映画を見た。という感じです。

4位:『ロード・オブ・ザ・リング』
これはビデオで見たのですが、予想外に面白かった。スケール感はスターウォーズ以上だったような…。アニメにもなっていて、そちらも必見!

5位:『パニック・ルーム』
ジョディフォスターを久しぶりに見た気がするが、サスペンスヒロイン健在!って感じで圧巻。うちの家にもパニックルームが欲しいと思った人は多いと思う。
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