10月25日に公開されるクエンティン・タランティーノ監督の新作『キル・ビル』のプロモーションのため、ある晴れた日曜日の午後、都内にて来日記者会見が行われた。司会の「チーム、キル・ビル!」の掛け声とともに、ジュリー・ドレフュス、栗山千明、千葉真一、ルーシー・リュー、クエンティン・タランティーノ、ユマ・サーマン、ローレンス・ベンダー、石川光久、種田陽平が壇上に立ち、ストロボの洪水の中、大きな歓迎の拍手が送られた。


タランティーノ:
日本に再び戻って来られたことを嬉しく思います。ちょうど13年前に日本に来ました。それ以来、日本に来るのを楽しみにしていました。多くの友人も出来たし、大好きな日本で最初にプレミア上映が出来るということは大変名誉に思います

ユマ:
こんなに大勢の方に来ていただき本当にありがとうございます。私の気持ちを、今監督がそのまま代弁してくださいました。日本に来られて大変嬉しく思っています。映画の中には日本語の台詞もありましたが、一生懸命練習して、皆さんに私の日本語が分かっていただけるように頑張りました。そして、こういったかたちで皆さんに映画をご覧になっていただけることを嬉しく思います。私は日本がとても大好きで、昔から何度も来ています。心からこの作品を楽しんでいただけることを願っております。

ルーシー:
来日できて嬉しく思います。日本に来るのはこれで3回目になります。日本の文化、人々は本当にビューティフルです。キャスト、クルーを代表しましてとても名誉なことだと思っています。日本のサムライ映画に捧げるつもりで作って、私も頑張ったので、皆さんも楽しんでいただけると思っております。

サニー千葉:
深作欽二さんがお元気な頃、クエンティンと一緒にロサンゼルスで、何か良い作品を作ろうよと話し合っていて、こんなかたちで私だけがクエンティンの作品に参加できて、ある意味ではとても残念ですが、私自身としては嬉しく感じております。非常に楽しかったです。

栗山千明:
私は今回、この作品に参加できて本当に感激で、嬉しい気持ちでいっぱいです。最高の監督とキャストやスタッフの方々に囲まれてお仕事が出来て、私にとってこの作品は宝物になりました。多くの方々に観ていただきたいと思います。

ジュリー・ドリュフス:
私たちは1年をかけてこの作品を作ってきました。日本の方々に楽しんでいただければとても嬉しく思います。日本での大ヒットを期待しています。

石川光久:
2年前、監督が会社に直接やって来たんです。みんな最初は本物だとは思ってもみなかったんですけど、その頃は凄く忙しくてとても引き受けられる状況じゃなかったんです。でも、タランティーノはこの作品にアニメが必要なんだって力説してまして、出来ないという状況なのに脚本をどんどん送ってくるんです。でも、その脚本を見て、やってみたいと思ったんですけど、脚本がめちゃくちゃで、それを具現化できるアニメーションディレクターは中沢さんしかいない!ということでお願いしたところ、彼が非常にいい仕事をしてくれて今に至りました。中沢さん、本当にありがとうございました。

種田陽平:
この作品はとてもエキサイティングな仕事でした。それはおそらくアメリカと中国と日本が一緒になって作ったことにあると思います。それと、美術のほうから一言言っておきたいのは、この映画の中に出てくる日本は北京のスタジオに作られた偽物の日本です。

ローレンス・ベンダー:
こんにちは、お元気ですかー!種田さんはたいへん謙遜なさってますが、多大な貢献と、大変素晴らしい仕事をしていただきました。今日はこんなにたくさんの方に来ていただき嬉しく思います。日本には何度も来ていますし、日本が大好きです。皆さんにこの映画を楽しんでいただければと思います。

Q:監督、ルーシーさん、ユマさんが印象に残っている日本語はなんでしょうか?

ユマ:
「日本刀が必要で」

ルーシー:
「刀は疲れ知らず、あんたも少し力が残っているといいけどね」

タランティーノ:
スシバーで半蔵の相方が言う台詞が好きです「何飲む?」

Q:なぜ本作では、女性を中心としたバイオレンス作品にしたのか教えてください。

タランティーノ:
自分が大好きな日本の映画や香港映画ではみな女性のヒーローがいたんです。西洋の作品ではあまり女性のヒーローや戦士、復讐者はいませんが、日本はもちろん、中国では文化的に女性の戦士が登場するし、子供の頃にそういった映画を沢山観て力を貰っていたんです。そして、大人になってから梶芽衣子さんや志保美悦子さんなどが出演されている映画などを観て、あらためて女性も凄い力を持っているなあということで、今回自分が復讐モノの作品を作るときには、女性にしたら凄いんじゃないかと思ったんです。そして女性だと、仁義のあり方も男性とは違ってくるので、自分にとっても、女性の観客にとってもエキサイティングになると思ったし、作品自体が楽しんでもらえるものになると思って女性の主人公にしました。それと、もう一つ。先週末、本作がアメリカで公開されました。今まで、こういったバイオレンスな作品には女性は入らないと言われ、来たとしても旦那や彼氏に連れてこられてという感じが多かったようですが、今回は観客の40%が女性で、女の子同士で来てる人も多かったそうです。

Q:なぜ作品中にアニメーションを取り入れたのか、そして今まで影響を受けたアニメはなんでしょうか?

タランティーノ:
この映画は映画の中の映画、つまり本当の世界では無いわけです。ですから、カラーからモノクロになっても良いし、物語もマカロニ・ウェスタンからサムライ映画、香港の映画からアニメに移っても良いと思うんですが、そういったものを○○○たいと思ったんです。それで、プロダクションデザイナーとの話の中で、アニメーションを入れてみようということになったんですけど、普通、アニメを監督する場合にはストーリーボードを書かなければならないんです。でも、私は書けないので、ショットごとに細かく脚本を書いたんです。そしてスケッチャーに会って事細かに説明してストーリーボードを書いて貰い、それが想像通りにアニメにあがってきたので、嬉しく思っています。話の中でコメディからドラマに移ったりというような流れに抵抗がある方もいるかもしれないけど、自分がやりたいか、やりたくないかで作っているし、プロダクションI.Gにアニメーションをお願いしたというのも、もともと彼らが作った作品が好きだからと言う理由だからです。

Q:ユマさんとルーシーさんの刀の使い方について

サニー千葉:
日本刀を教えてくれという依頼が監督からあって、約3ヶ月間、彼女たちは毎日毎日朝から夕方まで根をあげずについてきてくれました。印象的だったのは、二人が技の取りっこをしているんです。お互いに技が違うというのですが、私はそれぞれの役に合わせた殺陣を考えているのだから当然だと言っても、私には違うことを教えているんじゃないかって言うんです。そこで、どうしてそんなにこだわるんだと聞いたら、これは私自身に身についた女優としての財産になるんだという言葉があって、ひじょうに感動しました。

Q:お気に入りのポーズをとっていただけませんか?

ユマ:
(おもちゃの刀を手にして)これは適切な刀とは言えないですね。大人のオモチャみたいです(笑)。今回、刀を使った殺陣は私の女優人生の中で最も難しい経験でした。(振り回しながら)軽すぎてうまく使うことが出来ませんね。お尻を叩く道具のようにも思えますが、噛むこともできますね(笑)。本物の刀ではこんなこと出来ません。普通、出演した作品の小道具をもらって帰ったりはしないんですけど、今回は特別で、自宅に持ち帰って今でも大切にしております。小道具とは呼べないほど、自分にとって特別なものです。まさに美術品、または私の女優人生の中での重要な記念品となっています。あの刀は私と一体になったように感じたし、私の人生を変えたといっても過言ではありません。

ルーシー:
残念ながらこれは私たちがトレーニングのときに使った刀ではありません。また、あの時使った刀を今ここで渡されて、動いてくださいと言われても出来ません。なぜならば、あのシーンを撮るときには色々な感情がそこにあるからです。作品への想い、今まで積んできたリハーサルの想い、日本語や殺陣を教えてくれた人への想いなど、そんな全ての何事にも代え難い想いがそこにはあるので、同じようには出来ないと思います。みんなの想いがあって、キャンバスを用意してくれたからこそ、描くことが出来たと思うんです。もしもう一度観たかったら、お金を払って劇場へ行ってくださいね。

Q:監督は映画を通して若者や子供たちにどのように育って欲しいと思っていますか?

タランティーノ:
私にその質問をするのは違うような気がするんですけど(笑)。ひとつ伝えておきたいのは、非常に個人的なことですけど、また、皆さんがそれぞれ持っていることでもあるのですが、自分がこれだけは誰にも負けないと言えることは映画に対する愛情です。私としてはぜひ若い世代の人たちに自分の作品を通して、映画に対する愛情やいろいろなものを感じて欲しいと思います。私はアメリカ人映画監督だとは思っていません。むしろ自分は地球上の人たちに対して作っていると思っています。明日明後日に公開される映画だけではなくて、何年、何十年も前に公開された映画も観てもらって、映画に対する愛情とか歴史とかを知って欲しいです。まさに自分が子供の頃に映画を沢山観たように、同じような視点で映画を観てもらえるようになったら、それが一番幸せです。

Q:最後に、映画の見所について

ユマ:
とにかく素晴らしい復讐劇で息もつかせない内容になっています。監督は全身全霊を掛けて映画作りをしています。その献身ぶりは激しいものです。その献身ぶりが過激すぎて私はこの映画で大変苦労しました。この映画をご覧になったら絶対に損はさせません。十分楽しんで、価値のある夜になることでしょう。ですから、ぜひこの映画を堪能していただきたいと思います。

ルーシー:
ひと言では言い表せないけれど、私の人生を変えた作品と言っても良いと思います。クリエイティブ的にすぐれた作品が生まれたし、監督のような才能のあるスタッフとこれからは仕事をしていきたいと思うようにもなりました。あえて見所を言うならばアニメのシーンが好きなんですけれど、それだけではありません。雪のシーンも忘れられないし、ロサンゼルスで千葉さんに刀の使い方を教わって木刀で頭を打ったこともあるし、着物を着て刀を振りまわすのも大変だったし、最初の撮影も忘れられませんし、たくさんあってどれかひとつというのは言えません。千明が武器を振り回すシーンや、ジュリーと毎日一緒にトレーニングしたことも忘れられません。色々な日々の特別な経験がこの映画の中にあるわけですけど、ひとつひとつが名誉なことであり、女優として大きな意味をもつのだろうと思います。

Text&Photo:うたまる(キノキノ
『キル・ビル』
2003年10月25日より丸の内ピカデリー1他・全国松竹東急系にてロードショー

製作・監督・脚本:クエンティン・タランティーノ
出演:ユマ・サーマン、ルーシー・リュー、千葉真一、栗山千明、ダリル・ハンナほか
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