まずはウェス・アンダーソンの略歴。1970年テキサス生まれ。高校時代から自主映画を作り始め、テキサス大学英文科で出会ったオーウェン・ウィルソンと共同脚本で、短篇版『Bottle Rocet』を16ミリ映画として自主製作したのが94年。ってことは24歳の時。この習作がジェームズ・L・ブルックス監督の目にとまり、96年劇場版『Bottle Rocet(邦題:アンソニーのハッピー・モーテル)』を発表。ブルックス監督のお墨付きでその名をアメリカ映画界に轟かせる。98年、オーウェン・ウィルソンとの共同脚本・共同製作第2作として『天才マックスの世界』発表。これまたカルトな話題作となる。「天才ウェス・アンダーソン伝説」の始まりだ。んでから3年、2001年12月14日『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』全米5館で公開。口コミで大評判となり、年明けには740スクリーンに拡大公開され、ニューヨーク・タイムズ紙とサンフランシスコ・クロニクル紙の2001年度映画のベスト1位に、ローリング・ストーン誌とシカゴ・トリビューン誌では第3位にランクイン。ジーン・ハックマンはゴールデングローブ賞最優秀男優賞を獲得し、ウェス・アンダーソンもオーウェン・ウィルソンと共にアカデミー賞のオリジナル脚本賞にノミネートされたのをはじめ、各賞を賑わすに至ったのだった。

ウェス・アンダーソンの人脈の筆頭にいるのがオーウェン・ウィルソンだ。1968年、テキサス州ダラス生まれ。劇場版『アンソニーのハッピー・モーテル』(96)で正式に俳優デビュー。その元になった自主映画からウェス・アンダーソンと共同製作・共同脚本し、彼らを認めたブルックス監督の『恋愛小説家』(97)では製作補佐も経験したらしい。
本作のチャス役であるベン・スティラーの監督作『ケーブルガイ』(96)にも出演、彼の主演作『ミート・ザ・ペアレンツ』(00)でも共演し、さらに同時期日本公開となるベン・スティラー製作・原案・脚本・監督・主演の『ズーランダー』(01)でも熱い共演を見せている(『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』が難しかった人は気楽に爆笑できるコッチをみよう!)。

さらにウェス・アンダーソンの前作『天才マックスの世界』(98)、本作『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(01)でも共同脚本・製作・出演。なお3歳下の弟ルーク・ウィルソンもウェスの3作品に出演(前作では主人公が惚れる女教師の友人の医者ピーター役、本作ではテネンバウム家の末子リッチー役)、4つ上の兄アンドリュー・ウィルソンも『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』に出演している(ん? どれ?)。

『ズーランダー』
監督・出演:ベン・スティラー/出演:オーウェン・ウィルソン、ミラ・ジョヴォヴィッチ他
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そしてオーウェンはこの春日本公開された『エネミー・ライン』(01)でついにシリアスな主役を張り、上司役のハックマンとの絡みも『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』での共演の仕方と比べると、なんだか笑える熱さがある。他に『アナコンダ』(97)『アルマゲドン』(98)『ホーンティング』(99)などのメジャー娯楽作にも出演しているらしい(印象は薄いけど)。

というワケで、『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』は、この2人から拡がった人脈によって成立した希有な作品でもあるのだ(もっと複雑な人脈図はプログラム参照)。(5/5)

Text:梶浦秀麿
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『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』と天才ウェス・アンダーソン監督の世界
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