ブルース・ウィルスのように骨太役者でもなく、かといって、マイケル・ダグラスのように渋くセクシャルでもなく、もちろんリチャード・ギアのようにさわやかでもない。ハリウッドスターだけど、いわゆる普通のハリウッドスターとは違う。それが、今年で47歳になったジョン・トラボルタである。

映画館のスクリーンに彼の大きな顔がアップで映し出されれる度に、なぜジョン・トラボルタの顔はこんなに大きいのだろうと思ってしまうし、ここしばらくの出演映画を見ても、かっこいいのか、それとも渋いのか、あるいはユーモアセンスがあるのかどうか、彼のことをどのような役者として表現したらいいのかわからなくなってしまう。しかも、自ら制作・出演した映画『バトルフィールド・アース』はめちゃくちゃ評判が悪いし、国税庁とは税金でもめてみたりといったように。ジョン・トラボルタとは謎の人物というか、不思議な人物である。でも言い換えればそれこそが彼の魅力であるといってもいい。新しいタイプのハリウッドスターの魅力が彼にはある。

ざっと彼のことを思い出すと、77年『サタデー・ナイト・フィーバー』のトラボルタはとてもシャープで、キュートだった。彼の笑顔は典型的な映画スターの笑顔だったし、彼の得意なダンスは当時の若者のあこがれだった。ジャケットの襟から出るシャツの色とソックスがお揃いのピンクで、私なんかは当時真似をしたような覚えもある。78年の『グリース』では「サンディ!!」と少しあがり調子の声で共演のオリビア・ニュートン・ジョンに笑いかける笑顔なんて、もう忘れようと思っても忘れられないし、(まさにあの笑顔こそジョン・トラボルタである)あのリズムある歩き方はとても印象的だった。81年のブライアン・デ・パルマ監督の『ミッドナイトクロス』だってけっこういい演技をしていたと思うのだけど。彼はこのまま二枚目路線のハリウッドスターになるのではと思っていたのであるが。。。しかし、その期待は裏切られ、『ベイビー・トーク』なんかに出演してしまうし、もしかしたらこのまま消えてしまうのではないかと思っていたのであるが、、、しかし94年『パルプフィクション』で彼はまたまた期待を裏切って新しいスタイルのハリウッドスターとしてスクリーンに登場してきたのである。演技も変えて、髪型を変えて、そして体格も変えて(変えたのではなくて、単純に変わっただけなのかもしれないが)。あの映画以降のトラボルタこそがまさにハリウッドスター、ジョン・トラボルタである。変わっていないのは昔からのちょっとはにかんだ笑い顔と、大きな顔。これだけは一生ずっと変わらないだろうし、変わって欲しくない。老人になってもきっとトラボルタは大きな顔であのはにかんだかわいい笑顔を浮かべるに違いない。

『パルプフィクション』でのジョン・トラボルタについては語り出すときりがないのでやめておくが、やはり一番印象的なシーンは、あの死に方だ。松田優作はいつも死ぬシーンがかっこいいが、『パルプフィクション』でのジョン・トラボルタはその逆ですごくあっけなくていい。トイレから出てきたところをあっさりと打たれて死んでしまうなんてさすがはタランティーノである。しかも片手にはペーパーバック。映画史に残るクールな死に方のひとつである。

彼の最新作『ソードフィッシュ』ではギャングのボス、ゲイブリエル役として出演しているが、今回も彼にぴったりの役柄といってもいい。あの大きな顔は映画の最初から登場するし、演技はもちろんだが、最後には違うヘアスタイルになって一瞬だけだが、あの笑顔をちらっとみせてくれるし。ハリウッド・スター「ジョン・トラボルタ」の世界を堪能できる映画であることは間違いない。

ジョン・トラボルタはいままでの「ハリウッドスター」ではなく、新しいスタイルの「ハリウッドスター」として常に気になるのである。

テキスト:蜂賀亨




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