[ジュラシック・パークIII] JURASSIC PARK III

8月4日、日本劇場ほか全国東宝洋画系にて公開

製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ/監督:ジョー・ジョンストン/出演:サム・ニール、ウィリアム・H・メイシー、ティア・レオーニ、トレヴァー・モーガン、アレッサンドロ・ニヴォラ、ローラ・ダーン他(2001年/アメリカ/1時間33分/配給:UIP)
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南米コスタリカ沖の孤島------といえば、かつてジュラシック・パーク計画絡みで2度も大騒ぎが起きた場所だ。結局「恐竜動物園」構想も頓挫し、今は立入禁止区域となっているのだが、そこに行きたがる人々も後を絶たなかった。今また、ある少年が冒険好きな男と2人でパラグライダーで、そのソルナ島=サイトB上空に侵入し、そのまま行方不明となってしまった……。

2ヶ月が過ぎた頃、古生物学者のアラン・グラント博士(S・ニール)の元に、富豪を名乗る夫妻が訪れた。グラントは“パーク”での惨劇を目撃した数少ない学者の一人だが、今はモンタナ州で地道な化石発掘作業を続けていた。カービー夫妻、ポール(W・H・メイシー)とその妻アマンダ(C・レオーニ)は、そんな彼に発掘援助資金と引き替えに、サイトB上空を飛ぶ自家用飛行機のガイドを依頼しにきたのだ。研究助成金不足から、助手ビリー(A・ニヴォラ)の勧めもあって、しぶしぶ引き受けたグラントだったが、実はこの依頼には裏があった。同乗するメンバーには、いかにも屈強な傭兵らしき男達も入っていたのだ。いぶかしむ間もなく、飛行機はサイトBにあっさり着陸してしまう。

いきなりティラノサウルスより巨大なスピノサウルスの襲撃を受けた一行は、離陸もままならずに不時着。執拗なスピノの攻撃を避けながら、島を彷徨うことになる。もちろん狡猾なヴェロキラプトルの群れも健在だ。1人、また1人と恐竜達の餌食になりながら、彼らは行方不明になった少年エリック(T・モーガン)を、まだ生きていると信じて捜索する。脱出への頼みの綱は、恐竜が呑み込んだ衛星携帯電話と、助手ビリーが化石から復元したラプトルの声帯石膏モデルのみ。かつて惨劇を共に乗り越えたエリー(R・ダーン)に連絡がつきさえすれば、助かるかも知れない。はたして彼らの運命は? そして生き残るのは誰か?


もはやマイケル・クライトン原作ってのはどうでもよくなってる感じの『ジュラシック・パーク』シリーズ第3弾である。「親子の愛」そして「異種間の共存への道」っていうのが今回のメイン・モチーフみたいなので、まさにファミリー・ムーヴィ−の王道を行くもの。そんなテーマをバックに、適度なアクション、落ち着いてみられるサスペンス、抑え目の映像的驚きで、律儀に娯楽路線を展開しながら、シリーズ・ファンにも目配せしつつ上手に作った秀作だと言えるだろう。前2作を監督したスピルバーグは『A.I.』が忙しかったようで今回は製作総指揮のみ、新監督は『ジュマンジ』『遠い空の向こうに』のジョー・ジョンストンだ。

さて、原作や1作目で脇役だったギョロ目の数学者マルコム(ジェフ・ゴールドブラム)が2作目『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』の主役を張ったのは意外だったが、今回はその2作目には出なかったサム・ニール演じるグラント博士が再び主役を張ってくれる。ローラ・ダーン演じるエリーも美味しいカメオっぽい再登場を果たし、1作目のファンには嬉しいところ。

ただ登場する恐竜の「ヒューマン化」はどんどん進んでいて、保護(ネイティヴの「居留地」タイプ)というより「共存」を予感させる方向へと進みつつあるのが、現在のアメリカの倫理観というかポリティカル・コレクトネスな発想を反映しているようで面白い。なんとあの凶悪なラプトルは、母性愛に基づく知的な社会を形成しつつあり、お互いに会話してたりするようなのだ! いやはや……。人間側も、殺され役はさておき、離婚家庭の「子はかすがい」的やり直し、つまり「見直し再婚=やっぱり一生に一人の異性と添い遂げるのがいい」みたいなテーマになってて、少し前の離婚万歳なフェミニズム的自由からの揺り戻し風潮が反映されているようす。また『シックス・センス』のいじめっ子役だったトレヴァー・モーガン演じる12歳の少年エリックの飄々としたサバイバリストぶりも興味深い。現代っ子の面目躍如ってとこか。

全体にこじんまりしちゃった印象も否めないが、ディズニーの最悪な擬人化恐竜映画『ダイナソー』(生息年代の違いや植生の無茶苦茶さ、旧学説のままの恐竜描写に社会集団観、おちょぼ口のキャラは善玉で裂けた口は悪玉みたいな安易さなどなど、子供に間違った恐竜観を植え付ける害悪だと思う)と比べて、罪のないレヴェルに落ち着いてると言えるだろう。T-レックスVSスピノサウルスってな見せ場や、翼竜プテラノドンの活躍(こいつらにもやはり母性愛の裏付けがある)もあり、無難に愉しめる娯楽作として愉しむべしって感じかな。

Text :梶浦秀麿



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