[ドメスティック・フィアー] Domestic Disturbance
2002年4月6日より日比谷映画他にて公開

監督:ハロルド・ベッカー/出演:ジョン・トラヴォルタ、ヴィンス・ヴォーン、スティーヴ・ブシェミ、テリー・ポロ、マシュー・オリアリー、スーザン・フロイド他
(2001年/アメリカ/1時間29分/配給:UIP)

∵公式サイト

ボートを運ぶ軽トラックが、港を抜け街を流し住宅街をゆくシーンを、ソウル・バス風のデザインで点描するアヴァン・タイトルで始まる。メリーランド州サウスポート。船大工をしているフランク・モリソン(ジョン・トラヴォルタ)は、顧客の老夫婦のために採算を無視して仕上げたボートの進水式をしてから、急いで息子のバスケの試合を見に学校に向かう。入り口で別れた妻スーザン(テリー・ポロ)とばったり会って、少し気まずいながらも一緒に体育館に。ところが12歳の息子のダニー(マシュー・オリアリー)は欠場。チーム監督に「警察にいる」と告げられる。車を盗もうとしたらしい。彼は両親の離婚がいまだ許せず、嘘をついたり学校をさぼったりを繰り返しているのだ。今日も母の再婚話にキレて、フランクの所へ行こうとしたらしい。スーザンの再婚相手は最近町にやってきた実業家リック・バーンズ(ヴィンス・ヴォーン)で、今年の「町の男」として表彰されるほどの名士。フランクはかつて酒浸りだったせいで離婚したという過去があるので、町での信用はいまいち、という状況。だがダニーはそんな実の父を尊敬してるのだった。何とか息子をなだめ、再婚を認めさせるフランクだったが、「再婚パーティに父さんも来て」とねだられて渋々顔を出す。そこでリックの奇妙な客レイ・コールマン(スティーヴ・ブシェミ)が気になった彼は、後日町で会った時に話しかけ、「モーテルにいるが、この町が気に入ったので住もうかと思っている」と聞かされるのだった。だが、しばらくして息子が「リックがレイを殺したのを目撃した」と、フランクに助けを求めてくる。警察で調べてもらうが、日頃の行いもあって信じてもらえない。どうやら母が妊娠したと聞いたのがショックで、腹いせに嘘をついてるらしい、ということにされてしまう。だが、今度は本当だったのだ。ダニーを信じてやりたいフランクは、独自に調査を始めるのだが、唐突に息子が「嘘でした、ごめんなさい」と言い出して、途方に暮れることになる。ガールフレンドは「息子か私のどっちをとるの?」と怒り出すし、息子の態度もよそよそしい。警察をはじめ町の連中も、名士と元呑んだくれで斜陽の造船工場経営者ではどっちを信用するかと言えば……。フランクは再び酒に逃げそうになりながらも、真実を求めてあがき続けるのだった。

タイトルは直訳すると「家庭内恐怖」か。ドメスティック・バイオレンス(DV)という言葉から思いついたような、前妻の子の虐待妄想、と思わせて実は……ってな仕掛けの犯罪サスペンス家族ドラマである。トラちゃん(『ソードフィッシュ』で大復活)とブシェーミ(『ゴースト・ワールド』が良かった)が出てるので大期待して見てしまったんだけど、お話は火サス風味でちょいガックリ。個人的にはちょっと許せないラストの「ある処理」については、斎藤美奈子『妊娠小説』の定義に当てはまりそうなヤな感じ(バカなのは金持ちとの再婚に舞い上がる女だ、と言わんばかりの物語処理)があるんだけど、こうなりゃもう、名優たちの余技として、それぞれの演技を楽しもう。例えば名士リック役のヴィンス・ヴォーンといえば、『MIB』でゴキブリ星人の外側になったり、『サイコ』でマスカキ猟奇殺人鬼、『ザ・セル』で現代アートな妄想を展開する猟奇殺人犯と、個性的な悪役が似合う名優。今回もビリビリな結末(笑)まで迫力のワルぶりを熱演してくれる。スティーヴ・ブシェミが何かしぼんじゃった感じなのも役作りなのか、ホントに歳をとったのかと気にしながら見ると面白いかも。彼がバスケ・ファンであることが事件解決の糸口になるのだが、なんでもかんでもインターネットで調べて解決するのはいかがなものか? というかサーチできる理屈がよくわからんのは僕だけなんだろうか? 奥さん役のテリー・ポロは『ミート・ザ・ペアレンツ』の鼻血ブーお嬢さんの「その後」として観てみる手があるかも。監督は『タップス』『シー・オブ・ラブ』『冷たい月を抱く女』『訣別の街』のハロルド・ベッカー。

Text:梶浦秀麿

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