We Love TINTIN!

THE ADVENTURES OF TINTIN:
THE SECRET OF THE UNICORN

タンタンって、
いったい何者なの?

'80年代にはお洒落キャラクターとして人気のあったタンタンだが、実は原作の「タンタンの冒険」シリーズはインディ・ジョーンズシリーズに影響を与えたほどの冒険活劇で、ジョージ・ルーカスが製作総指揮を努めた『レイダース 失われたアーク《聖櫃》』のプロモーションで来日したときに“「タンタンの冒険」が作品のコンセプトになっている”と名言しているほど。世界中を旅してさまざまな冒険し、危険を乗り越えて謎を解明したり、困った人を助けたりするタンタンとインディ・ジョーンズには、なるほど共通点が多い。撮影当時、監督のスピルバーグはタンタンを知らなかったそうだが、フランスの映画評でタンタンと『レイダース』が比較される記事を数多く目にして「タンタンの冒険」を読み、すぐに夢中になったと言う。

タンタンは少年記者という設定なのだが、車やバイクも運転するし(時には飛行機まで!)、少年のくせに銃を撃つのも巧い。学校に行っている様子はなく、記者といっても記事を書いている様子はない(新聞の一面を自らの活躍で飾ることはあっても!)。

年齢ははっきりとは明かされていないが、14〜17歳ぐらいというのが有力な説らしい。原作者のエルジェは、タンタンに自分のヒーロー願望を投影したと言い、自身のボーイスカウトでの活動が作品の原点になっているとも言っている。あまり幸せな子ども時代を過ごさなかったエルジェは、ボーイスカウトに自分の居場所を見つけ、夢中になったそうだが、彼がボーイスカウトに在籍していたのはまさにこの年代だった。そして、エルジェはのちに新聞社に入社するのだから、まさにタンタンはエルジェの願望を投影した、夢のヒーローだったのだろう。

原作者のエルジェについて、
もっと知りたい!

『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』に少し遅れて、原作者のエルジェに焦点をあてたトキュメンタリー『タンタンと私』が公開される。ドキドキハラハラ、ジェットコースタームービーのように楽しい『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』と比べると、こちらは地味な作品だが、エルジェ自身が、いかにして「タンタンの冒険」シリーズを作り上げたのかを本音で語る、興味深い作品だ。事実、エルジェが本音で語り過ぎたために、30年以上も公開されなかったのだとか。

タンタンが生まれたのは、1929年。シリーズ24作目となる「タンタンとアルファアート」の完成を前にエルジェがこの世を去ったのが1983年。エルジェはなんと50年以上もファンを魅了し続けた。当初は知らない外国の様子を想像で描いていたそうだが、それについてファンに批判を受けたことをきっかけに、エルジェは綿密な取材や資料集めを行って作品に反映するようになる。そして「タンタンの冒険」は、子どもも読む(公式には7歳から77歳向けということになっている)コミックであるにも関わらず、社会情勢までも作品に反映した。スターリンの時代のソビエトを駆け回り、シカゴでアル・カポネを懲らしめ、中国で満鉄爆破事件に居合せ…と列挙に切りがないのだが、このために「タンタンの冒険」は20世紀の年代記でもあると言われている。

さすがのエルジェもベルギーがナチスの占領下におかれた時代には政治色を排除した作品を描くことを余儀なくされるが、このときに描かれたのが『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』のベースとなっている「なぞのユニコーン号」で、エンターテインメント作品としての評価が高い。

『タンタンと私』では「タンタンの冒険」の製作エピソードに限らず、エルジェ自身の恋の話なども語られる。社会の変化だけでなく、自身の心情や信条が作品に与えた影響などがわかって、とても面白い。そしてこの映画を観たあとに『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』を観ると、エルジェ自身が(もちろんCGではあるが)カメオ登場していることに気付いてうれしくなるはずだ。

Tintin et Moi

『タンタンと私』
監督・脚本:アンダース・オステルガルド

2012年2月4日より、渋谷アップリンク、銀座テアトルシネマ、新宿K's cinemaほか全国順次公開

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©HERGE/MOULINSART 2011 ©2011 Angel Production, Moulinsart


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